トヨタが国内全店で全車種販売に舵切るワケ 車種数を半減、後発でもカーシェアに参入へ

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トヨタは東京の直営販社4社を2019年4月に統合する。写真はそのうちの1社、東京トヨタの店舗(編集部撮影)

さらにトヨタは今年1月からは国内営業体制の軸をチャネルから地域に変更。全国を7つのブロックに分けて、チャネルの枠を超えた地域中心のエリア展開で販売戦略を立てる体制に変更しており、「脱全国」へ舵を切り始めている。

その一環で、2019年4月には東京の直営販売会社4社が統合する予定だ。トヨタ店、トヨペット店、カローラ店、ネッツ店の4つの直営販社を一本化し、新会社を設立する。当面はチャネルを維持する方針だが、4チャネルの車種を一緒に売る店を設ける方針だ。

一方、東京の取り組みが全国に波及するにはハードルがある。全国のトヨタ販売店のうち、9割は地場資本で東京とは状況が違う。販売店同士はこれまでお互いに切磋琢磨してきただけに、ライバル意識も高い。またクラウンからヴィッツまで幅広い品ぞろえをしても、それぞれの店で簡単に全車種販売ができるかは不透明だ。

そもそも価格帯に応じて客層が違うほか、各店で店舗投資やシェアリングサービスの体制強化、整備などの対応が増えることが予想されるからだ。全車種販売で競争が激しくなれば、再編や淘汰が始まる可能性もあるため、警戒する販売店もあるだろう。

販売店の意識改革が欠かせない

これに対して、トヨタ幹部は「ものすごい競争になるのは間違いない。今までは護送船団方式だったが、最後の船に合わせるのではなく、真っ先にチャレンジしていくお店を応援したい。これからも各店舗の地域を愛する力をいい意味で競争につなげられればいい」と話す。

トヨタは国内生産300万台維持を掲げており、その前提として国内販売150万台を必要としている。少子高齢化でも新車販売を維持するためには、チャネルごとではなく、一段と地域に寄り添い、その地域のニーズに合った車種やサービスを提案することが必要であり、販売店の意識改革をスピードアップしないと生き残れないとの認識だ。

定休日に都内のトヨタ系販売店に並ぶ試乗車。トヨタ東京販売ホールディングスでは、試乗客が少ない平日に、試乗車をカーシェア用に貸し出すことを視野に入れる(編集部撮影)

意識改革のひとつとして掲げたのが新車販売だけでなく、新たなサービスとしてのシェアリングサービスだ。利益率の高い新車が売れなくなる可能性もある両刃の剣だが、時代の流れには逆らえない。国内のカーシェア利用者は今年3月に130万人を突破し、1年で20%を上回る高い伸びを示す。

ただこの領域ではすでに専業が多く展開しており、後発のトヨタが今後参入して成功する保証はない。地場資本を武器にした強固な販売網で圧倒的な国内シェアを誇ってきたトヨタだが、新たな時代に向けた販売店改革は簡単ではなさそうだ。

冨岡 耕 東洋経済 記者

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とみおか こう / Ko Tomioka

重電・電機業界担当。早稲田大学理工学部卒。全国紙の新聞記者を経て東洋経済新報社入社。『会社四季報』編集部、『週刊東洋経済』編集部などにも所属し、現在は編集局報道部。直近はトヨタを中心に自動車業界を担当していた。

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