フランス発25万円スピーカーは何が凄いのか パトロンが支援、フランス起業ブームの実態
この技術を極小のチップに落とし込んで作られたのがスピーカー「ファントム」で、「ライブ会場で用いられるのと同等の最大出力のスピーカーを、30分の1のコストと大きさで作ることができる」(日本法人の事業開発マネジャーであるルカ・フェネック氏)という。
音を再生する仕組みは音響の研究者が、電気信号の処理は数学の研究者が担うなど、物理や数学が強いフランスの強みも生かした。
スピーカーはすでに47カ国で展開されており、米アップルの直営店「アップルストア」も取り扱う。昨年冬には地元パリのオペラ座内に旗艦店もオープンさせた。老舗がひしめくパリにおいて、ベンチャー企業が格式あるオペラ座内に店を構えることは異例だという。
さらに、海外出張先で見つけたスピーカーにほれ込んだ伊勢丹や蔦谷家電のバイヤーからのラブコールがきっかけとなり、この9月には日本での発売に至った。
急拡大するフレンチテック
デビアレが狙うのはBtoC市場だけでない。2016年に調達した1億ユーロ(約130億円)を元手に進めているのが、自動車や家電などに同社の音響システムを組み込むライセンス事業だ。その第1弾が、欧州のケーブルテレビ最大手、英スカイとの提携だ。
今年の夏にスカイが発売したのは、テレビ受信用機器と組み合わせて使用するテレビ用音響機器だ。日本円で4万円弱(スカイTV会員の場合)と、価格を抑えた。
2017年にルノーが発表したコンセプトEV「SYMBIOZ(シンビオズ)」にも、車内に同社のオーディオが搭載されている。前出のフェネック氏によれば、「日本企業からも18社ほどからすでに引き合いがある」。蔦谷家電でスピーカーを取り扱うCCC(カルチュア・コンビニエンス・クラブ)も、「グループ全体でさまざまな協業の可能性がある」(蔦谷家電で音楽・映像家電の商品調達を担当する西尾茉優氏)と明かす。
フランスでは現在、デビアレのようなテクノロジー系ベンチャー、通称「フレンチテック」が花盛りだ。農業やエネルギー産業のイメージが強いフランスでベンチャーとはやや意外だが、調査会社ディールルームによれば、フランスにおけるベンチャー・キャピタルの投資額は2016年から急激に拡大。2017年8月時点では、約27億ユーロ(約3500億円)と欧州諸国中で最も大きい。
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