2035年、中国は「スマートカー強国」になるか 政府と民間がタッグで自動運転を積極推進

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EV産業チェーン、インターネット通信網、有力なIT企業の存在など、中国にはすでに、自動運転市場を育成する条件が整う。中国政府は昨年末、百度を「自動運転」、アリババ集団を「都市ブレーン(AIシティ)」における中国全土のビッグデータを収集・分析できる国家クラスのAIオープン・イノベーション・プラットフォームに認定し、技術の実用化を図ろうとしている。

日本企業は業種・分野またいだ連携必要

自動運転技術の開発・実用化が急速に進む中国は、日米欧企業にとって無視できない市場である。GMは2018年6月、中国で発表したキャデラックCT6に高徳地図を搭載、独ボッシュは中国大手地図3社とともに高精度地図の開発に取り組む。ウェイモ(グーグル系)が8月、上海に進出し、自動運転事業の展開を模索している。

米Navigant Researchが今年発表した「世界自動運転企業ランキング」では、GM、ウェイモ、ダイムラー・ボッシュがトップ3を占め、トヨタとホンダはトップ10入りしなかった。米中と比べて、日本には自動運転開発を手掛けるベンチャー企業が少ない。自動運転を含むAI人材も不足している。

ホンダは、中国AI企業の商湯科技と画像認識技術の開発、およびアリババとのコネクテッドカーの開発を発表。6月には百度の主導する「アポロ計画」への参加も明らかとなった。また、ルネサスエレクトロニクスは長城汽車と、日立がテンセントとそれぞれ自動運転、モノのインターネット分野での提携を発表した。

先行する日本企業のこうした動きを見れば、日本の自動車メーカーが自動運転を実現するためには、地図データやセンサーなど、業種や分野をまたいだ連携を検討する必要があるのは明白だ。これからの日本企業は国内に留まらず海外にも優秀な人材を求め、企業買収や協業体制作りに臨むべきであろう。中国市場では、BATといかに協業し、自動運転の実用化を実現できるかが、結果を左右することになる。

湯 進 みずほ銀行ビジネスソリューション部 主任研究員、中央大学兼任教員、上海工程技術大学客員教授

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タン ジン / Tang Jin

みずほ銀行で自動車・エレクトロニック産業を中心とした中国の産業経済についての調査業務を経て、中国自動車業界のネットワークを活用した日系自動車関連の中国事業を支援。現場主義を掲げる産業エコノミストとして中国自動車産業の生の情報を継続的に発信。大学で日中産業経済の講義も行う。『中国のCASE革命 2035年のモビリティ未来図』(日本経済新聞出版、2021年)など著書・論文多数。(論考はあくまで個人的見解であり、所属組織とは無関係です)

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