Reproが企業内AI研究所で成果を出す仕掛け 成果の定義、成果を生み出す方法とは?

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具体的な研究内容について今井太宗氏は以下のように話します。

今井太宗(いまいたいそう) 2016年1月にRepro株式会社に入社。WEBエンジニアとしてマーケティング機能や分散処理基盤を利用した機能の開発に従事。2018年7月、よりデータ分析・機械学習にフォーカスしたチーム「Repro AI Labs」を立ち上げ、さらなる付加価値を提供するべく奮闘中(写真:『Ledge.ai編集部』)

「基本的にはアプリデータを利用してマーケティングに生かす研究をしています。実証実験段階のものでは、
・レコメンドプッシュ通知機能
・チャーン予測オーディエンス機能
・プッシュ通知の配信時間最適化機能

などがあります。AI文脈ではありがちな機能ではあるのですが、すぐに効果が出る実用的な領域にまずは着手しています」(今井氏)。

「マーケティング分野のAI活用は、IT企業の巨人たちが収益の上がる広告分野に走っているので、私たちはCRM分野でやっていきたいと思っています」(平田氏)。

マーケティング分野でのAI活用について話す平田氏(写真:『Ledge.ai編集部』)

確かにCRMやマーケティングオートメーションの分野でのAI活用には可能性を感じます。

実証実験では、実験結果の評価が大事になってくると思うのですが、何を指標としているのでしょうか?

「弊社ではマーケティングツールとして大事な指標を、そのまま実証実験の指標に置いています。たとえばチャーン予測では離脱する人の予測精度ではなく、離脱予測からの施策効果を指標に置く、という具合です」(今井氏)。

Reproでは離脱率がいかに下がるかを指標に置いた

AI研究の視点で見ると、離脱者予測の精度を高めることをゴールと考えがちです。しかし、Reproでは予測する本来の目的である離脱させないことを指標と考え、離脱率がいかに下がるかを指標に置いたそう。

「たとえば、プッシュ通知の配信時間最適化研究では、24時間すべての時間帯でプッシュ通知を送る実証実験もおこないました。一般的にプッシュ通知は一斉配信で行うことが多く、ユーザー体験を損ねかねない深夜や早朝帯の配信は厳禁だと考えます。

実証実験について話す今井氏(写真:『Ledge.ai編集部』)

ただ、実際にアプリのアクセス分析をしてみると、早朝の4時や5時に、アプリを利用しているユーザーも多いんですよね。

そういったユーザーには朝4時に有用な情報を通知することはむしろ良い体験なはず、と考え、その判定をAIでおこない個人への最適化を図ったりしています」(今井氏)

実証実験では、これまで16〜17時で一斉配信していたところを、AIでの時間帯最適化によって「期待行動をするユーザーが20%増」といった成果が出ており、年内にはサービスインする予定とのこと。

これまでパーソナライズ機能がついたマーケティングツールは数多くリリースされており、「個々人に最適化したコミュニケーション」をやろうとする潮流は今までもありました。

ただ、理想論としてはありつつも、現実的には個々人に最適化することは分析・設計・運用工数の面で、ほとんどの企業が諦めていたと思います。

しかし、その課題を解決するために、慣習的にはタブーな深夜・早朝帯でのプッシュ通知へも乗り出し、しかも成果まで出している。企業姿勢としても、研究姿勢としても素晴らしいですね……!

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