不動産会社タテルで新たな書類改ざんが発覚 個人向けのアパート経営投資に迫る限界

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だが8月31日、報道によって冒頭とは別の名古屋の物件で、タテルが顧客の預金残高を改ざんし、融資審査を通りやすくしたことが発覚。同社は事実関係を認め、9月4日に特別調査委員会の設置を決めた。株価は改ざん発覚後、一時約8割も下がった。

個人向けの不動産投資は大丈夫なのか

今回、週刊東洋経済の取材によって明らかになった2件を含め、どの程度の改ざんがあったのか。タテル側は「調査中のため答えられない」という。タテルのオーナーから改ざんの相談を受けている加藤博太郎弁護士は「同業他社についても融資書類の改ざんに関する通報を受けている」と警告する。

個人向けに、書類を改ざんしてまで融資を引き出そうとした点では、今年5月に破綻したスマートデイズに続く不祥事だ。タテルの事態を受けて、証券市場では、資産を持たない顧客を対象にした賃貸経営というビジネスモデルに疑心暗鬼が広がっている。

「頭金ゼロ」を掲げて賃貸アパート経営を行っているシノケングループは「多くの問い合わせを受けているが、不正行為はない」と発表。AMBITIONやフェイスネットワークなどの不動産会社もリリースを出す対応に追われた。

不動産経営のコンサルティングを手掛ける、さくら事務所の長嶋修会長は「拡大志向の不動産業者は金融機関が貸し出すなら何でもやってしまう。今後(融資の)審査が厳しくなれば、無理をする業者は一掃されるのでは」と指摘する。

成長を渇望するあまり、返済原資に乏しい個人にまで対象を広げたアパート投資。業界で相次ぐ不祥事は、無理に無理を重ねたビジネスモデルの、終わりの始まりを暗示している。

一井 純 東洋経済 記者

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いちい じゅん / Jun Ichii

建設、不動産業の取材を経て現在は金融業界担当。銀行、信託、ファンド、金融行政などを取材。

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