なぜ今さら?欧州鉄道で「客車」見直しの兆し 日本では廃れたが柔軟性や低コストで再評価
最高速度の時速300km以上まで一気に加速し、その速度を長時間維持する高速列車や、都市近郊で頻繁に加減速を繰り返す近郊列車については、動力分散方式の優位性は揺るぎない。
だが、最速でも時速230kmが上限の在来線を走る列車については、そこまでの加速性能や高速性能は求められていない。また、高い性能が要求される動力分散方式の高速列車は、製造費用だけでなく維持費やランニングコストも高額で、単なる在来車両の代替目的で必要以上に投入することは余計なコストの発生に結び付く。
2017年12月22日付記事「鉄道『高速化競争』から欧州が離脱した理由」でも記したが、ヨーロッパでは現在、さらなる高速化よりも適正な速度による運行が一般化しつつあることや、高速新線開業ラッシュが一段落したことから、在来線客車列車をいきなり高速列車で置き換えるケースは減りつつある。
むしろ、既存の機関車や客車もうまく活用しつつ、順に新車へ置き換えることができるので、特に予算が潤沢ではない中・東欧諸国の場合、今後もしばらくは客車が主流となっていくことだろう。
今後も新型客車は増える?
また、電車タイプの固定編成は繁忙・閑散期における需給調整が難しいという側面もある。
たとえば、ドイツ鉄道で運行されている高速列車ICE3は1等車2両に2等車5両、それに1両の2等/食堂・売店車両が連結されており、通常はこの8両編成で運転され、混雑する路線や時間帯には8両編成を2本つなげた16両編成となる。
しかし、利用客数によっては2編成併結運転では供給過剰となってしまうのはもちろん、売店と食堂が編成中2カ所に存在することになるため、これらのスタッフの人件費も2倍になるといった問題も生じる。
在来線の長距離列車では客車を1~2両増結するだけで十分という場合が多く、それならば1両ずつ増結の可能な客車列車は鉄道会社にとって都合がよい。オーストリア鉄道で運行される特急列車レイルジェットは固定編成ではあるが、機関車が客車を牽引するスタイルを継承しているため、列車によっては編成の端に客車を増結して運行する姿もしばしば見掛ける。需要に応じて柔軟な対応ができる点が、客車列車の最大のメリットと言える。
純然たる高速鉄道を持たない国々では、中長距離列車向けの車両としてしばらくは客車が主流であり続けると考えられ、老朽化した旧型客車の置き換えや増発を目的として、今後も新型の客車が導入されることが予想される。
今回の入札では苦杯を喫したボンバルディアではあるが、中国製部品の使用などで価格を抑えた客車は、経済的にまだ発展途上の東欧諸国などでは十分に勝算があるものと考えられる。今後、ボンバルディアが巻き返すことができるのかも注目される。
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