「補助金頼りの起業支援」が失敗しまくるワケ 熱海復活を支えた「本当の支援」とはなにか

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講師や事業をアドバイスするメンターは、単なる専門家やコンサルタントではなく、自ら事業を立ち上げ、実践してきて、成功も失敗も経験してきた講師陣にお願いしています。4カ月間で事業計画をつくるだけでなく、事業開始までのアクションもしていくことも求めています。実際にテストマーケティングなどを行って、期間中にサービスを開始した方もいます。

また、プログラム期間中に、地域内の経営者や金融機関に相談する機会や、地域の方々の前でプレゼンテーションする機会を設けたりしています。地域の人たちから応援してもらったり、地域のネットワークを活用できる場をつくっているわけです。

地方で起業しようとする人たちがつまずいてしまう部分を解決するために、どのようなプロセスで事業を立ち上げていくのか、そして、どのように顧客や協力者を見つけ出すのか、ということをこのプログラムのなかで体感できるようにしています。

企業が次々と生まれ育つ環境をつくる

そして、私たちが目標にしているのは、「創業件数」ではありません。

いくら創業件数が増えても、持続・発展可能なビジネスを生み出さなくては意味がありません。創業支援をやっている間だけ企業が生まれるのでは不十分です。

創業支援プログラムをやることにより、地域で新たにチャレンジする起業家が孤立しない、より事業を始めやすく発展させやすい環境をつくっていくことが重要です。

起業し成功するための要件はいくつかあります。

なかでも、同じようなステージにある起業家同士のコミュニティの存在、そして先輩起業家とのつながり、そしてメンターやあるいは金融機関や不動産オーナー、行政など多様な人たちとのネットワーク、といった人的なつながりが必要です。こうした環境があって初めて企業が次々と生まれ育つことを知りました。

そこで、創業支援プログラムを通して、企業が次々と生まれ育つエコシステム(生態系)づくりを目指しています。

だからこそ、このプログラムでは、地域の経営者や金融機関などの方々にもかかわってもらう場も設けています。

また、歩行者天国にした路上に多くの店を開く「海辺のあたみマルシェ」のような場に参加してもらい、顧客と出会い、実際に商売を実践する場を提供したりしています。私たちの管理する物件でテスト的に営業する機会をつくったりもして、実践を後押ししています。

起業したい人に補助金をつけたり、人件費を出したりという施策が全国各地でありますが、これでは起業家は育ちません。

自ら事業をつくりあげる、それを後押しする取り組みこそ、必要なのです。

市来 広一郎 machimori代表取締役

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いちき こういちろう / Koichiro Ichiki

NPO法人atamista代表理事。一般社団法人熱海市観光協会理事。一般社団法人ジャパン・オンパク理事。一般社団法人日本まちやど協会理事。

1979年静岡県熱海市生まれ。東京都立大学(現・首都大学東京)大学院理学研究科(物理学)修了後、IBMビジネスコンサルティングサービス(現日本IBM)に勤務。2007年熱海にUターンし、ゼロから地域づくりに取り組み始める。遊休農地再生のための活動「チーム里庭」、地域資源を活用した体験交流プログラムを集めた「熱海温泉玉手箱(オンたま)」を熱海市観光協会、熱海市と協働で開始、プロデュース。2011年民間まちづくり会社「machimori」を設立、2012年カフェ「CAFE RoCA」、2015年ゲストハウス「guest house MARUYA」をオープンし運営。2013年より静岡県、熱海市などと協働でリノベーションスクール「@熱海」も開催している。2016年からは熱海市と協働で「ATAMI2030会議」や、創業支援プログラム「99℃」なども企画運営している。

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