今さら復活「トロリーバス」に隠された新技術 プラハで46年ぶり導入、新世代の乗り物に?

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運行開始の日に早速、この新しいトロリーバスに試乗した。

パルモヴカ駅バスターミナルに設置された給電システム。起終点で一度充電を行えば、1往復の運転には十分な量が蓄電できる(筆者撮影)

地下鉄パルモヴカ駅に隣接したバスターミナルには、わずか数十mの短い架線が張られ、その脇に給電装置が設置されている。バスが到着すると、運転士が下車することなくポールがするするっと上へ持ち上がり、架線に接続された。この状態で30分以上、充電を行っていたが、試験運用ではない通常の運用となった際、どの程度の時間で充電が完了するのかは興味深いところだ。

やがて乗客を乗せて発車。最初はバッテリー駆動で市街地を抜けていき、途中からバイパス道路へと入る。まさに電車のようなモーター音で滑るように走っていく。バイパス道路を出て交差点を曲がると架線が見えてきた。ここから先は急勾配区間で、架線を使ってトロリーバスとして運行する。

停留所に到着すると、再び自動でポールが持ち上がり、架線への接続が完了。この動作はまさに一瞬で、乗客が乗り降りしている間に完了というイメージである。架線からの電気を受けたバスは、急勾配をものともせず走り抜けて丘の上に到着。架線集電の区間はわずか600mで、再びバッテリー駆動へと戻った。

新世代の乗り物として復活なるか

屋根上に大型バッテリーを搭載したトロリーバス。ナンバープレートがないのは、法規上鉄道に分類されるため、ナンバー取得の必要がないからだ(筆者撮影)

交通局によると、構造が複雑で高さに制限ができてしまう架線は極力張らず、バッテリー駆動中心の運行を検討するとしている。もちろん、架線集電でもバッテリー駆動でも走行性能に著しい差はなく、クリーンで静かな乗り心地だ。試験運行ルートを乗り通してみて、市街地のみならず、バイパス道路に勾配区間などさまざまな条件をテストするのに最適なルートを選定したことがわかった。

1つのことにこだわってしまうことで、先へ進めなくなってしまう事例が多いなか、「トロリーバス」「バッテリー駆動」という、2つのシステムの良い部分を取り入れたプラハのシステムは、十分評価されるべきではないかと感じた。

数十年前、時代遅れの遺物と酷評されていたトラムは、今や新時代の都市交通として世界各地で導入されている。トロリーバスも、柔軟性に欠け、景観を損ねる乗り物という固定観念を捨てれば、新世代の乗り物として復活できるのではないか、その1つの答えを見た気がした。

橋爪 智之 欧州鉄道フォトライター

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はしづめ ともゆき / Tomoyuki Hashizume

1973年東京都生まれ。日本旅行作家協会 (JTWO)会員。主な寄稿先はダイヤモンド・ビッグ社、鉄道ジャーナル社(連載中)など。現在はチェコ共和国プラハ在住。

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