iPhoneの覇権を揺さぶる「新ライバル」の正体 もはやアップル最大の敵はサムスンではない

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国土の広い中国で高いシェアを誇り、欧州、中東、アフリカ各国でも強い。彼らの収益の約半分(49.3%)が携帯電話事業者向けのネットワーク機器だ。日本でもソフトバンクが5Gネットワーク機器としてファーウェイ製品を採用することを発表しているほか、NTTドコモとも共同実験サービスなどを行ってきた。LTE世代においても、何らかの形でファーウェイ製品が採用されており、彼らの製品をまったく採用しない携帯電話事業者は少ない。

加えて、ファーウェイは前述のようにアメリカ市場には依存していない。彼らの製品は国家安全保障の問題にかかわると告発されたことなどもあり、北米市場での売り上げ比率は低く、昨年度実績で全体の6.5%。実は2016年は全体の10.9%に増加していたものが急減した結果だ。完全撤退の報道もあるが、そもそも北米市場への依存度は低く、北米市場以外での伸びが大きく、グローバルでの売上高は15.6%も伸びた(6036億人民元、約10兆円)。

今後も北米市場の比率は下がっていく可能性が高い。オーストラリアでも排斥の動きが強まっているが、欧州での5G投資に食い込んでいくことが間違いない状況なことに加え、中東、特にアフリカでのシェアが拡大していくとみられるためだ。

中国中央政府は総額600億ドル(約6兆6000億円)を投じて、アフリカ各国のインフラ投資支援を行うと発表した。こうした、アフリカ各国への投資戦略はファーウェイの事業をさらに強化していくだろう。端末事業では存在感の低いインドでも、インフラ向けネットワーク機器は売り上げを伸ばしている。

このように、米中貿易摩擦が激しくなる中で、ファーウェイの強みは米中貿易摩擦による影響を受けにくい事業体質を持っていることだ。貿易戦争におけるアメリカの強みのひとつは“巨大なアメリカ市場”と言えるが、そもそもアメリカの市場から遠ざけられているファーウェイの立場からすれば、さほど意に介する必要はなく、得意な市場に集中すればいい。

このようにインフラ事業者として安定した事業基盤を築いているうえ、端末事業でも存在感を示している。彼らの強みは自社製のシステムオンチップ(SoC)を用い、基本ソフトとタイトに統合した製品を作りやすい環境にあることだ。

クアルコム製チップを凌駕する自社製SoC

彼らの財務が極めて良好なことは、旺盛な半導体投資からも想像できる。ファーウェイは半導体事業への投資額を公表していないが、8月31日~9月5日ドイツ・ベルリンで開催された「IFA 2018」で発表したスマートフォン向けチップ「Kirin 980」は、アメリカのクアルコムの最上位チップであるSnapdragon 845をほとんどの要素において凌駕しているという。

SoCにはプログラムの処理を行うプロセッサーだけでなく、カメラの機能や映像処理を司るイメージシグナルプロセッサー(ISP)も含まれている。さらにファーウェイは独自に開発したニューラルネットワークプロセッシングユニット(NPU)を統合してエッジ(端末側)AI処理の能力を高めており、Kirin 980にはその最新版をデュアルコアで内蔵させた。

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