凶悪殺人犯と対峙しても何とか生き残る方法 自衛隊「特殊部隊」創設者が徹底解説
その代表的なものが、米軍の「MDMP(ミリタリー・デシジョン・メイキング・プロセス)」であり、それは状況分析をどの順番で行い、自分の行動方針をどう決めていくかという標準的な手続きだ。その考え方は極めて合理的かつ論理的である。ポイントを順に整理すると、こうなる。
何のために実施するのか、その目的を明確にする
それを実施する土地の特徴を考慮する
相手の特徴(強点・弱点)と自分の特徴(強点・弱点)を比較し、どうしたら自分の強点を相手の弱点にぶつけることができるかを考える
相手が実施可能な行動を列挙する、自分が実施可能な行動を列挙する
列挙した行動を比較検討し、相手がどう出てきても、自分が有利な行動を抽出する
私自身は、5年前の5月某日の真昼間に、防衛省にほど近い四ッ谷の路上で女性をメッタ刺しにしている男に出くわしたことがある。その男は、女性の腕や脚を何十カ所も切りつけ、ぐったりとしてうなだれている女性の頬に包丁を突き刺していた。まさに血の海の中に女性はいたが、幸いなことに、動脈にまで達した傷はなかったので、まだまだ助かる可能性があった。
結局、その男から包丁を取り上げて身柄を拘束し、警察に引き渡すことができ、女性も何とか一命を取り留めた。あのときも前記した考え方で取るべき行動を決めていった。
ある事件を基にシミュレーションしてみた
5つのポイントを順序通りに実施していくといっても、時間にすると1秒以上かけるようなものではないので、最初のポイントの結論が出る前に、次のポイントに関して考え始めていることも普通にある。同時にいくつものことを考えていることもあれば、とりあえず行動を起こしてしまってから考え始めるポイントだってある。
では、5年前の四ッ谷の事件のときに、何をどう考え、どのように行動したかをこと細かに再現してみる。
1 任務分析
犯人と血の海の中にへたり込んでいる女性が視界内に入った時点で、3つの選択肢が浮かんだ。
・実力行使により制圧する
・その場から、逃走する
選択肢が浮かんだと書くと、あたかも3つが同時にきれいに脳裏へ浮かんだかのようなイメージを受けるかもしれないが、そうではなかった。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら