サスペンションではダンパーに注目したい。シビックとゴルフが電子制御の可変式を用意するなかで、ダンパー内のストローク終端部にもう1つのダンパーを組み込んだHCC(ハイドロリック・コンプレッション・コントロール)を採用している。
こちらはひとクラス下のルーテシアR.S.の前輪に導入したものを4輪に拡大採用した。通常ではラバーブッシュが受け止める最後の領域に第2のダンパーを組み込むことで、コーナリング限界域での接地性を高めるだけでなく、乗り心地向上にも寄与するとのことだ。
気になるのは4気筒ターボエンジンの排気量が2Lから1.8Lに縮小されたことだ。旧型の2Lは設計が古かったための変更で、最高出力は279馬力、最大トルクは390Nmと、320馬力/400NmのシビックタイプRには及ばないが、273馬力/360Nmの旧型は上回る。
トランスミッションは3ペダルの6速MTから、2ペダルの6速デュアルクラッチタイプになった。ただし本国ではMTもあり、ルノーのインポーターは従来もMT車を数多く用意してきたことを考えれば、後に追加される可能性もある。
ではその新型メガーヌR.S.の走りはどうか。今回は特設コースで、シャシー担当チーフエンジニアのフィリップ・メリメ氏、テストドライバーのトップガン、ロラン・ウルゴン氏の助手席を体験したあと、箱根の公道でステアリングを握った。
エンジンは2500rpm辺りからなだらかにターボが立ち上がることを含めて、滑らかな印象だった。逆に言えば旧型が持っていた野性味は薄れた。爆発力ではシビックのほうが上かもしれない。ただ少し前に乗ったアルピーヌA110同様、昔のスポーツカーを思わせる音の演出はその気にさせるものだった。
ライバルにはない4輪操舵とHCCの威力
新型の肝はシャシーにあると、まず助手席で教えられた。路面は濡れているのに、そうとは思えないペースでコーナーをクリアしていく。タイヤが鳴いたり滑ったりはしない。低速コーナーでの異次元と言える旋回性、高速コーナーでの安定感、荒れた舗装での接地感など、4輪操舵とHCCの威力を思い知らされた。
自分のドライビングはそのレベルには到達しないが、硬めなのに滑らかという不思議な乗り心地、高性能前輪駆動車らしからぬ自然なステアリングの感触は把握できた。またこれはメガーヌGTでも感じたことだが、4輪操舵は限界の高さ以上に、ライバルにはない新鮮な体験をもたらしてくれる。
乗り心地についてはシビックタイプRも、現行型はかなり快適になったが、リアサスペンションがメガーヌと同じトーションビームからマルチリンクに進化し、19インチに対して20インチのタイヤを履くなどのアドバンテージは、第一にコーナーのグリップ能力のためという印象を受ける。
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