15代目クラウンの販売はどれだけ好調なのか トヨタ店専売は強みでもあり拡販のネック

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とはいえ、クラウンの販売水準がセダンとして群を抜いていることは間違いない。14代目も、モデル末期であった2017暦年(2017年1~12月)ですら2万9085台と月販平均約2400台を売っている。

トヨタがクラウンを販売していくうえで、強みでもあり、ある意味で拡販にはネックだという見方もあるのは、クラウンの販売チャネルが「トヨタ店」に限られることだ。高級車ブランドの「レクサス店」を除き、トヨタ系の「カローラ店」「ネッツ店」「トヨペット店」という3系列では、クラウンを扱っていない。

トヨタ店は高級車販売に強く、顧客基盤も富裕層をガッチリとつかまえている。だからこそ、新型クラウンが発売になればトヨタ店の上得意客に対してアプローチができ、乗り換えを促進できるのが強みである。

扱いチャネルと販売台数

とはいえ、ここ数年のトヨタは「プリウス」「アクア」「シエンタ」「C-HR」などなど、4系列のすべてにチャネルを広げて拡販を進めているモデルも多い。昨年、フルモデルチェンジした「カムリ」も、かつてのカローラ店専売だった先代では月販目標台数500台に対し、現行モデルはトヨタ全店扱いにすることで月販目標を2400台に高めた。

残念ながらその販売目標こそ達成していないものの、自販連によればカムリの2018年1月から6月までの累計販売台数は1万2057台となり、月販平均ベースでは約2009台となっている。カムリ自体の魅力も上がったが、取り扱いチャネルが増えたことも販売台数増と無関係ではあるまい。

そして、カローラ店やネッツ店は大衆車寄りながら、トヨペット店はトヨタ店ほどではないにしても、高級車を扱っている販売チャネルだ。たとえば、トヨペット店はハイエースを専売車種として取り扱っている。ハイエースを社有車としている中小企業社長は、クラウンのような高級セダンを好む向きもあるかもしれない。トヨペット店は、クラウンと同じ後輪駆動の上級セダンである「マークX」を扱っている。これらの点では、トヨペット店がクラウンを取り扱っても、売っていく先はありそうだ。

そんなことを妄想しつつも、15代目クラウンのうちにトヨタ店以外での併売が始まる可能性はほぼないだろう。ただ、近年、トヨタが少しずつ販売系列を崩していく動きもある中で、各販売店の専売車種をどこまで残せるか。歴史の長さの分だけ、さまざまなしがらみもあり、実行の難しさは十分に承知しているが、クラウンの将来を見ていくうえで、トヨタがこの点について何も考えていないワケもないだろう。

小林 敦志 フリー編集記者

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こばやし あつし / Atsushi Kobayashi

某メーカー系ディーラーのセールスマンを経て、新車購入情報誌の編集部に入る。その後同誌の編集長を経て、現在はフリー編集者。

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