ホンダ「ビート」がいまだ根強く愛される理由 「S660」に通じる軽オープンの流れつくった

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バブル期は、クルマに限らず何においても単純明快で刺激の強いことが好まれ、味わい深いといった滋味は評価されにくい時代でもあったといえるだろう。

バブルの恩恵で、自然吸気エンジンのミッドシップオープンスポーツカーと、ターボエンジンを搭載したFRスポーツカーという、同じ軽スポーツカーといえども選択肢があったことは、非常に恵まれた時代であった。そのなかで当時注目を集めたのは、わかりやすいカプチーノだったのである。

フルオープン状態(写真:Honda Media Website)

しかしバブル崩壊後、景気の回復はあったとしても低成長時代となると、地道に安定した生活を永く維持して不安定要素を排除したいという機運が高まる。そこに、クルマとの対話を楽しみながら、かみしめるほど味わいを伝えてくるビートのようなクルマのよさが、浸透しはじめたのではないだろうか。瞬発力はそれほどでなくとも、ミッドシップによる挙動の一つひとつを確かめつつ運転する喜びが、見直されたのだと思う。

繊細なアクセル操作を必要とするミッドシップカー

ミッドシップカーは後輪荷重が大きいため、ことにカーブではタイヤのグリップを確かめながら繊細なアクセル操作をする必要がある。一方前輪は、荷重が少ないことからハンドル操作に対する手応えを得にくい場合があり、同じく繊細な操作が求められる。タイヤのグリップを確かめつつ、アクセルやハンドルを操作するためには、自分の操作に対するクルマの応答を確かめるという対話が不可欠だ。その奥行きは深く、楽しみは長い。

好景気でないことが、かえってビートの魅力を顕在化させているといえそうだ。

ビートの後継として、ホンダはS660を2015年に登場させた。ビートが1998年に販売を終了してから17年後のことである。

エンジン排気量は軽自動車規格であるため、660ccとビート時代と変わらない。最高出力も自主規制値の64馬力である。しかし今回は、ターボチャージャーを装備し、過給する。ミッドシップを継承し、ビート時代とは方式が異なるが屋根を取り外せる構造とし、タルガトップ的にオープンを楽しめる。変速機は、6速マニュアルシフトに加え、CVTによる無段変速のオートマチックも今回は用意された。タイヤは、ミッドシップであることから、S660でも前輪と後輪の寸法をビートと同じように変えている。

次ページ高度な操縦安定性を実現したS660だが
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