欧州の「新参鉄道会社」が悩む機関車の選び方 中古やリースが中心だが「お手頃」新車も登場

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一方「手軽さ」という面ではリースという方法がある。メーカーから購入した機関車を民間会社へ貸し付けるという車両リース会社は、オープンアクセスによって運行事業に参入する企業にとって欠かせない存在となっている。

MRCEからドイツ鉄道グループの「DBシェンカー」へリース中の機関車(シーメンス製「ヴェクトロン」)。DBシェンカーはMRCEにとって重要な顧客の1つだ(筆者撮影)

現在、欧州地域におけるリース最大手となっているのが、三井物産の100%子会社であるMRCE(Mitsui Rail Capital Europe/本社:オランダ)社だ。三井物産はアメリカやロシア、中南米においても鉄道リースの経験を有しており、MRCEは欧州市場に特化した子会社ということになる。

同社はリースする機関車のメンテナンスはもとより、万が一の事故や故障などの際も24時間365日無休で対応しており、速やかに修理やアフターパーツの供給ができる体制となっている。またリースされた機関車の運転データ、状況、位置などをつねに監視しており、この情報は運行会社とつねに共有できる体制を築いている。

チェコ鉄道がリース会社ELLから貸借している機関車(シーメンス製「ヴェクトロン」)。最高時速200kmで国際特急列車ユーロシティを牽引し、ドイツまで直通運転する(筆者撮影)

こうしたリースは、列車運行のノウハウがない新規参入の事業者にとっては、少なくとも保有する機関車の問題で頭を悩ませることがないという点で優れている。近年は一部の国鉄(大手鉄道事業者)においても、機関車の一部をリースで賄っている場合があるなど、機関車のリース事業は非常に大きく成長している。ただし、リース費用はそれ相応に必要で、小規模な企業の場合、収益次第ではそれが負担となる可能性も否定できない。

自前で発注できればいちばんだが…

3つめの方法は、新型機関車をメーカーから直接調達することである。最新の機関車は、性能面においてもメンテナンスの面においても、中古の機関車と比較すれば圧倒的に優れており、自社保有となればリース費用も発生しない。だが、当然ながら購入時の価格はそれ相応であること、また注文する際、仕様が複雑で新規参入業者にはわかりにくいという点がある。

現在、シーメンスやボンバルディアといった車両メーカーが製造する機関車は、いずれも基本となるプラットフォームがあり、それに事業者の要望に応じたパーツを組み上げていく、という方法が一般的だ。欧州には大きく分けて4種類の電化方式があり、信号システムも各国で異なるため、機関車も使用する地域によってこれらに対応しなくてはならないが、この方式なら組み合わせで仕様を造り分けられる。また、最高速度を高く設定するか、貨物用に最高速度を落として牽引力を増すか、といったことも変更可能だ。

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