熱中症予防でも帝京ラグビー部が最強なワケ 日々の「健康チェック」の仕組みが参考になる

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「選手にはなるべくスポーツ飲料を割ったものか、経口補水液を飲むように勧めている」

同部を支えて16年という大木さんの「ススメ」には、根拠がある。5年前の夏、夜になって急に体温が上がり、熱中症と診断された選手がいた。当時は、水とスポーツ飲料の2種類を飲ませていたが、スポーツ飲料の味が苦手だったその選手は水しか飲んでいなかった。

「水だけでは間に合わないこと、そして、現場で倒れずとも熱中症は後でやってくることを学んだ」と振り返る。

飲むタイミングも重要だ。真水の場合、胃を通過するまでに30分かかる。スポーツ飲料は水より吸収されるまでのスピードは速いが、それでも飲んですぐというわけにはいかない。

よって、「運動開始前」にある程度、補給しておくよう選手に伝える。熱中症予防のため、練習前に経口補水液のゼリーなどを摂取する選手もいるそうだ。スタッフ間で相談し、練習メニューの合間、30分に一度のウォーターブレークを入れることもある。

チーム全体の熱中症リスクに対する意識の向上

その3 「ボク、ヤバいです」と言える人的環境をつくる

目に見えないけれど、最も有効な準備。それは、チーム全体の熱中症リスクに対する意識の向上だ。

クラブハウスのトイレに貼られた尿の色のチェック表(撮影:島沢優子)

クラブハウスのトイレには、尿の色のチェック表が貼られている。レモン色はOKだが、オレンジに近くなると腎機能が弱っている兆候で、熱中症になりやすい。

選手同士でも注意を払ってもらう。汗の量が尋常でない、顔色が変わる、ぼーっとしている。「そんなときは教えてくれ」と言ってある。自己申告よりも他者申告で早期に手当てされることのほうが多いという。

「僕らトレーナーは講習会などで、選手の熱中症はチームの責任だと考えるように、と言われます。そのくらいの覚悟で注意深く見なくてはなりません。でも、僕らだけが注意してもダメ。スタッフと、100人を超える選手のチーム全員が(熱中症の)リスクに対して高い意識を持たなくてはなりません」

そう語る大木さんが警戒する学年は、1年生と4年生だ。ほんの数カ月前まで高校生だった1年生は、大学ラグビーというハイレベルな運動強度に心身ともに慣れていない。なかでも関東圏以外からきた選手は、ヒートアイランドといわれる東京の暑さに慣れていない。

最後の年を迎える4年生は、最上級生のプライドがある。体調を崩していても「外れられない」と頑張ってしまう傾向があるという。

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