江ノ電の混雑対策、「沿線住民優先」は正解か 鎌倉市の「社会実験」に利用者が下した評価

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たとえば長谷駅前踏切には、GWに私が見た時でも6人の警備員が多数の観光客の整理にあたっていた。これらの費用は江ノ電の支出である。警備員の中には、聞かれて鎌倉駅までの歩き方を答えている人もいた。

江ノ電としては、鉄道に乗らず、歩くことを勧めることはどう思っているのか。

「その場限りの利益ではなく、お客様の立場になって考えるのが大切だと思っています。何よりも混雑に腹を立ててもう鎌倉に行かないとなられるのがいちばん残念で、社にとってもマイナスです。混雑時に歩くのか乗るのか、われわれで選択肢を提供して、選んでいただくのはお客様。歩くと良かったのを知らずに帰る方が気の毒です。次はのんびりできる季節に来ていただきたい」(江ノ電)

重要なのは情報の出し方

このほかレンタサイクルの活用、ピークシーズンの1日乗車券の値上げ、海上交通の活用、湘南モノレール利用のアピール、国道134号の改善などさまざまなコメントも参考になったが、ページ数の関係で取り上げられないのが残念だ。

社会実験当日の鎌倉駅前(筆者撮影)

混雑時の沿線住民優先入場は、世論の支持が多いことが明確になった。

ただしここで強調しておきたいのは、優先入場はあくまで解決策のうちのひとつにすぎない点である。これからもさまざまな検討が必要である。

前述したように江ノ電がこれだけ混雑するのは、GWがいちばんで、それ以外ではこれまで述べてきたほどの混雑は通常起こらない。

また鎌倉は宿泊する旅館、ホテルが少ないという問題を抱えていて、日帰り客が多いため、10時から16時のコアタイムを外せばピークシーズンでの大混雑を回避できる。朝早くに訪れるのがおすすめだ。

GWなど短期間の混雑緩和のためハードへ投資するのは過剰なものになりかねない。

前回も強調したが、ピークの平準化対策とそのための情報の出し方が重要である。

内田 宗治 フリーライター、地形散歩ライター

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うちだ むねはる / Muneharu Uchida

主な著書に、『地形と歴史で読み解く 鉄道と街道の深い関係 東京周辺』(実業之日本社)、『外国人が見た日本 「誤解」と「再発見」の観光150年史』(中公新書)、『関東大震災と鉄道』(新潮社)など多数。外国人の日本旅行、地震・津波・洪水と鉄道防災のジャンルでも活動中。

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