子供が「嘘」をブレストする道徳授業の即効性 答えが出ないのも1つの答えなのだと学ぶ
先生はクールダウンさせるように、子供たちをワークシートへ向かわせる。さまざまな意見を聞いたうえで、自分の思いを言語化させるのだ。議論を通じて考えた、自分なりの意見を子供たちが真剣な表情で記していく。
「相手を喜ばせる嘘なら、ついてもいい」
「たとえ相手が喜んでも、お世辞はだめ」
「だめなのは自分の罪を逃れるための嘘」
「最初から相手を傷つけるための嘘もだめ」
授業の終わりに、再び『どう解く?』のページを開いた先生は、同書に載っている谷川俊太郎さんの意見を子供たちに紹介した。
「嘘をつかずに生きていくことは誰にもできないのだから、嘘を自覚しながら嘘といっしょに生きていこう」
子供たちは「どういう意味だろう?」と、すこし不思議そうな表情で先生を見つめる。先生は、あえて解説をつけ加えない。
ちょうどチャイムが鳴り響き、答えのない授業の終わりを告げた。
作者も驚く予想以上の盛り上がり
公教育で全国的に見ても先進的な取り組みを行う戸田市。中でも道徳の授業に力を入れているのが、戸田第一小だった。この日の授業は公開され、終了後には関係者による振り返りミーティングが行われた。
戸田市教育委員会の21世紀型スキルアドバイザーで教育コンサルタントの為田裕行さんは、授業で活発な議論が交わされたのは「『どう解く?』が持つコンテンツの力」だと太鼓判を押す。
この日は『どう解く?』の作者たちも授業を見学していた。本書で絵の制作を担当したTBWA\HAKUHODOの木村洋さんは、次のように授業の感想を述べた。
「子供たちには柔軟な考えを持ってほしいと願い、この本を企画しました。授業でうまくいくかどうか心配していたのですが、予想以上に盛り上がっているのを見て、さすが現場の先生の力はすごいなと驚きました」
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