その出来栄えはどうか。拠点となった軽井沢のホテルでキーを受け取り、走り慣れたワインディングロードへ向かう。ターボエンジンは車重1810kgに達するボディをものともせず力強く加速させる。ステルヴィオは4WDだが、通常は後輪に100%のトルクが配分され、必要が生じると瞬時に最大で60%のトルクを前輪に配分する仕組み。乗った印象はRWDそのものだ。
エンジンに感心する前に、曲がり角を2つ3つ曲がったところで「これこれ」と思わず(運転中にもかかわらず)膝を打った。ステアリングが非常にクイックだったのだ(ギア比は12:1)。
この場合のクイックとはステアリングホイールを少し回しただけで前輪が大きく切れるということを意味する。レーンチェンジ程度なら手首をくいっとひねる程度で事足りる。曲がりくねった山道も中立位置から左右に半周も回せば、ほぼすべてのコーナーを曲がり切ることができ、手を持ち替える必要がない。
背の高いSUVでそこまでステアリングをクイックにすると、車体が激しくロール(左右に揺れること)してしまうのではないかと心配されるかもしれないが、そこはジュリアで実証済みの高いボディ剛性と、ハード過ぎずソフトすぎない絶妙なチューニングのサスペンションによって、不快な挙動は巧みに抑えられている。
車名の由来となったイタリア北部のアルプス山中にあるステルヴィオ峠は、計48カ所のヘアピンコーナーをもつツイスティな道路で有名だそうだが、確かにこのクルマならキビキビ走ることができるだろう。
クイックなステアリングは歴代モデルに共通する伝統
クイックなステアリングはアルファロメオの歴代モデルに共通する伝統。SUVという、言ってみればはやりのチャラチャラしたカテゴリーに進出したことを快く思わない生粋のアルフィスティ(アルファロメオファン)も、ステルヴィオに乗ってコーナーをいくつか曲がれば納得するはずだ。
ここまでスポーティに走らせた時に不安がないどころかここまで楽しさを感じさせてくれるSUVには、もっと高価なモデルも含めて接したことがない。セダンのジュリアとまったく同じ感覚で走らせることができた。SUVになってもアルファロメオはアルファロメオだった。
ロールス・ロイスをはじめ、フェラーリを除く世の中のあらゆる自動車ブランドが、アメリカと中国という2大市場で必須という商売上の理由からSUVを手がける時代とはいえ、アルファロメオという歴史ある大名跡を俗物的なSUVに用いる決断には勇気が必要だったはずだ。
ジャンルはまるで異なるが、ミック・ジャガーにラップを歌わせた、あるいは松平健にサンバを踊らせたチャレンジに似ていなくもない。彼らは時代にのって見事に何度目かの脚光を浴びた。ステルヴィオからもヒットの匂いしか漂ってこない。
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