子連れ再婚の熟年夫婦変える民法改正の波紋 新設の「配偶者居住権」とはどんな権利か

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配偶者居住権は、居住することのみに特化した権利であるので、所有権よりは低額の権利となる。自宅不動産の所有権を得るよりは低額で自宅不動産を利用できる権利を確保できるというメリットがある。

ただ、自宅を利用する権利を確保するという面からすると、親子間で遺産をめぐって特にトラブルになっていない場合であれば、たとえば「父さんの遺した遺産は、母さんが亡くなるまでは、とりあえず母さん名義にしておこうよ」というように、すべてを残された配偶者名義にすることも珍しくない。こうなると居住権どころか、所有権が残された配偶者名義となるわけで、配偶者居住権をあえて設定する必要がないともいえる。

しかし、相続税のことを考えた場合はどうか。

父が死亡した時点と、その後に母が死亡した時点とで2度にわたり相続税の負担をすることになる(いわゆる二次相続)。配偶者居住権に関する課税がどのようになるかはまだ不明だが、父が死亡した時点で子どもに所有権を相続させ、残された母には居住権を設定するといった方法をとれば、相続税としては一度の負担で済むことになる。

これは配偶者居住権の活用例の1つだが、今後、さまざまな利用方法が検討されるだろう。もちろん、配偶者居住権はいいことばかりではなくトラブルの原因ともなる可能性も十分にある。たとえば熟年再婚をしたようなケースではどうだろうか。

熟年結婚が抱える相続問題

死別や離婚を経験した者をターゲットにシニア層の結婚について、さまざまな広告を目にするようになったが、熟年再婚は珍しいことではなくなった。

子がいる者同士が、いわゆる熟年といわれる年齢になってから再婚をした場合、子と親の再婚相手はあくまで「他人」であって、親子関係はない。配偶者の一方が亡くなると、このような「他人間」で相続問題を協議していくことになる。

このようなケースで、先ほどのように「相続財産はいったんすべて再婚した妻に……」となったらどうなるか。前述のとおり子どもにとって父の再婚相手は「親」ではないため、その後再婚相手が亡くなった場合、財産は再婚相手の相続人に流れてしまい、父の側の子どもは相続財産を受け取れなくなってしまう。

厚生労働省の資料によると、男性の平均寿命は 80.98歳、女性の平均寿命は 87.14歳となっており(厚生労働省「平成 28 年簡易生命表の概況」より)、確率からすると男性のほうが女性より早く亡くなる可能性が高い。もし再婚した子持ちの男性が遺言で配偶者に居住権を与えた場合、どういうことになるだろうか。

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