利便性大「大阪モノレール」は地震に負けない 空港アクセス線として活躍、隠れた人気路線

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改めて大阪モノレールの路線図を見ると、沿線に大学が多いことに気づく。柴原駅には大阪大学豊中キャンパス、宇野辺駅には立命館大学大阪いばらきキャンパス、阪大病院前駅には大阪大学吹田キャンパス、彩都西駅には大阪大学箕面キャンパスがある。これだけ沿線に有名大学があるにもかかわらず、「大学アクセスの路線」というイメージは薄いように感じられる。

立命館大学は京都・衣笠を本拠地とし、経営学部、政策科学部、総合心理学部がある大阪いばらきキャンパスは2015年4月に開設された。最寄り駅は宇野辺駅のほか、JR京都線の茨木駅、阪急京都線の南茨木駅もある。

宇野辺駅から立命館大学大阪いばらきキャンパスまで歩いてみた。

私は平日の15時ごろに宇野辺駅で降りたが、学生の姿はまばらだった。宇野辺駅からは南茨木駅方面に向かって、大阪モノレールと平行するように歩く。歩行者専用路はそれほど広くなく、大学の行き方を示す看板も少なかった。大阪いばらきキャンパスへは歩道橋でJR京都線を越える必要があるが、歩道橋の整備はそれほど進んでいない。スロープは設置されているが、遠回りになり薄暗い。宇野辺駅から大阪いばらきキャンパスまで測ると徒歩10分だったが、スーツケースを持っていると厳しいかもしれない。つまり、立命館大阪いばらきキャンパスの場合は、大阪モノレールよりも周辺道路の環境が宇野辺駅からのアクセスを厳しくしているといえる。

大阪モノレールが大学アクセスに便利な路線という印象は薄いかもしれない。それでも、大阪空港から各大学へ1本でアクセスできることは大学側にとっては、大きなメリットになるだろう。実際に、大阪大学豊中キャンパスに通っている学生に聞くと、大阪大学から大阪国際空港を利用する際は所要時間、料金、乗換回数の観点から大阪モノレールを利用する、という。

駅にうるおいをもたらす大阪モノレールのサービス 

視点を変えて、大阪モノレールが提供するユニークなサービスに注目してみる。大阪モノレールの各駅にはモノラウンジ、モノドリンクと称するラウンジ・ドリンクコーナーや図書館を思わせるモノレール文庫がある。他の鉄道会社ではないサービスだけに、実態はどのようなものか。万博記念公園駅の構内を訪れた。

万博記念公園駅の「モノドリンク」(写真:大阪高速鉄道)

万博記念公園駅の改札口を入ると、奥に喫茶店を思わせるテーブルといすがあり「モノドリンク」と書かれてあった。周辺には飲料水やアイスクリームを売る自動販売機のコーナーがあり、大阪モノレールの車両を模した子ども向けのモックアップもあった。モノドリンクには高齢者の姿が目立ち、大阪モノレールのモックアップは親子連れが代わる代わる使っていた。どの利用者も車両を待つ合間に一服しているように見受けられた。

次にモノレール文庫に立ち寄った。モノレール文庫にある書籍は基本的に乗客から寄贈されたもの。これらの本は借りることもできる。ただ通り過ぎるだけの駅ではなく、一服できる駅になっている点が新鮮だった。都市部の鉄道において、大阪モノレールの取り組みは鉄道輸送+αのサービスをもたらすものとして、参考になるのではないだろうか。

新田 浩之 フリーライター

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にった ひろし / Hiroshi Nitta

1987年兵庫県神戸市生まれ。2013年神戸大学大学院国際文化学研究科修了。関西の鉄道をはじめ、中欧・東欧・ロシアの鉄道旅行、歴史について執筆。2018年にチェコ政府観光局公認の「チェコ親善アンバサダー2018」に就任。

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