新宿「歌舞伎町」は2大私鉄の開発で変わるか 東急は新ビル建設、西武は駅リニューアル

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色とりどりの看板に彩られた歌舞伎町の夜(筆者撮影)

これに影響されたのが五島慶太である。推測の域を出ないが、西武の新宿進出に危機感を覚えたのだろう。現在のミラノ座跡地の場所に東急グループ各社出資の下、1952年に「東京スケートリンク」を開業。その後1956年に「東急文化会館」を開業させた。そのとき、映画館「ミラノ座」が生まれる。同じ年には東宝が「新宿コマ劇場」を建設。終戦から10年。ようやく鈴木喜兵衛の目指した「道義的繁華街」が生まれたのである。

一方で、周辺では風俗産業が興隆し、一帯で繁華街を形成していった。1985年の新風営法の施行により、ゲームセンター、ディスコが風俗営業法の範囲に入り、許可制となった上に深夜営業が規制された。その結果これらの撤退が相次ぎ、代わりに同じ風営法の規制を受けるものの、売り上げがより多い性風俗店が大幅に増えることになった。

浄化作戦と「ルネッサンス」

こうして形作られた歌舞伎町のまちの姿とイメージは、鈴木や石川が望んでいた盛り場とは趣が違うものだった。1999年に東京都知事に就任した石原慎太郎は不法滞在の外国人を減らす目的もあり、2003年頃から歌舞伎町浄化作戦を行った。主に治安対策や風俗店の取り締まりが行われたこの取り組みには一定の効果があったものの、歌舞伎町の熱気がやや失われたという評価も残った。

そんな中、2005年からは新宿区と地元商店街、民間企業、警察、消防、NPOなどが一体となった取り組み「歌舞伎町ルネッサンス」が始まる。「大衆文化・娯楽の企画、制作、消費の拠点」を将来ビジョンとして、再び鈴木喜兵衛の目指したまちの姿にしようというのである。このため、歌舞伎町ルネッサンス推進協議会が組織され、路上清掃や違法な看板の撤去、パトロールなどを定期的に行っている。

新宿ミラノ座(新宿TOKYU MILANO)とグリーンプラザ新宿の跡地。ここが東急電鉄の手で再開発される(筆者撮影)

歌舞伎町ルネッサンスにあわせるように、新宿区は2006年に「歌舞伎町まちづくり誘導方針」(2009年一部改訂)を定め、現在はこれに沿った形で再開発が進められている。2008年に閉館した新宿コマ劇場は2015年に新宿東宝ビルとして生まれ変わった。そして現在、東急ミラノ座の跡地の再開発や西武新宿駅のリニューアルが予定されている。

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