W杯記者が口々に「ロシアは最高」と言うワケ ロシアについての先入観は忘れよう
ロサンゼルスを拠点とするロイターカメラマン、ルーシー・ニコルソンは、オリンピックを7大会取材しているが、W杯は今回が初めてだ。ようやくのことでリオネル・メッシとクリスティアノ・ロナルドを目にすることができて興奮していた。
「オリンピックと比べて、W杯で最も驚いたことの1つは、男性ばかりだということ。ファン、メディア、そしてもちろん選手も含めて、圧倒的多数が男性だ」と彼女は言う。
「それを考えると、暴力沙汰をほとんど目にすることがなかったというのは驚きだった。普通のロシア人、特に女性は例外なく親切で暖かかった。こうした歓迎の態度は、国家的なイベントに対するプライドや、あるいはおだやかな天候に刺激されたものかもしれないが、その大半は自発的で純粋なものに見えた」
「見たこともないくらい清潔な都市」
カメラマンの彼女にとって一番大変だったのは、バルト海沿岸のカリーニングラードから黒海沿岸のソチに至る、複数の都市のあいだを移動だった。18日間でアエロフロートとシベリア航空の便に搭乗すること14回。疲労のあまり、試合前のスタジアムで眠り込んでしまったこともあったという。
「観光客がめったに行かないロシア各地を訪れるのは魅力的だった」と彼女は語る。「大人数で集まることを制限する規制はW杯のために一時解除され、いつになくお祭り的な雰囲気が生まれていた」
オーストラリアで活動するロイターカメラマン、デビッド・グレイにとって、今回は4大会連続のW杯取材で、ずっとサマラに滞在していた。
「今回のW杯は、重要な一つの要素が、他の大会すべてと違っていた。それは、何を期待するかという私の先入観だ」と彼は言う。冷戦期を知る西側からの訪問者のほとんどが口にする感想と同じである。
「今大会を通じてロシア人と話をすることで、彼らが持っている非常に強い自国へのプライドへの理解が深まった。尊敬すべきプライドだと思う。私がこれまで目にしたなかで最も清潔な街も、そのプライドのたまものだろう」と同カメラマンは語った。自動車の行き交う音と同じくらい頻繁に散水車の音を耳にしたと彼は言う。
また、彼はサマラにあるUFOのような外観のスタジアムにも感銘を受けていた。
「掛け声や歌声が円形の天井にきれいに共鳴していた。これまでのW杯プのときと同様、何週間も耳の奥で響き続けるだろう」
もちろん、ロシアでの夢のような日々が過ぎた後で、現実を直視する必要はあるだろう。今は温暖でも、他の季節には雪が降るのだし、どれだけ多くのファンが楽しんだとしても、それによって深刻な政治問題が隠れるわけではない。
プーチン大統領が、他国から嫌われるロシアというイメージを払拭するためにW杯を利用しているという批判的な見方もある。
とはいえ、2018年夏、ロシアはW杯という機会に、最高の「顔」を見せた。世界もその顔に微笑み返している。
(Andrew Cawthorne 翻訳:エァクレーレン)
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