三越伊勢丹「クールジャパン」のあきれた実態 官民ファンドが出資する海外店での迷走劇
今年5月に連続4日間、同店を訪れた文筆家の古谷経衡氏は、「実質5フロアのうち、1階から3階まで顧客がいなかった。各フロアに20人ほどのスタッフがいたが、談笑していた。施設が豪華なだけに、閑散とした雰囲気が際立っていた」とその印象を話す。
全体的に商品の値段はかなり高い。山梨県産ブドウは1箱(2房)約2万円、山梨県産桃1箱(5個入り)約1万円、小さな仏像が約11万円、フライパンには約1万円の値札がついていた。
「本物の日本」を発信するコンセプトだが、カルチャーコーナーには日本文化とは無縁の洋書や、ミッキーマウスの模型が並んでいた。
政府が支援すべき案件だったのか
三越伊勢丹HDはジャパンストアの今後について、「(共同ではなく)1社で運営したほうが柔軟に対応できる。クアラルンプール市内にはほかに3店舗あるので、連携して展開していく。品ぞろえを見直し、店舗改装も視野に入れて再チャレンジしたい」とする。ただ、どこまで再建に本腰を入れるかは不透明だ。
ジャパンストアの問題は、CJ機構の存在意義にもつながる。日本文化の海外展開を目指して2013年に発足したが、成果は芳しくない。会計検査院が2017年3月末の官民ファンドの投資損益を調べたところ、CJ機構については17件、約310億円の投融資で44億円の損失が生じていた。
明治大学公共政策大学院の田中秀明教授は「CJ機構の投資対象には政府が支援すべきか疑問な案件もあり、収益を上げるためのガバナンスが弱い。現在14もの官民ファンドがあるが、三つあれば十分。CJ機構も統合されるべき」と説く。
見逃してはならないのは、ICJに政府出資が含まれていたことだ。日本文化の発展促進、官民プロジェクトの正当性、税金の適切な使途など、複数の観点からジャパンストアをめぐる経緯を精査する必要がある。
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