結局「ドクターイエロー」はいつまで走るのか あと3年は確実だが、次期車両はどうなる?

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しかしJR東海は5月30日に次期軌道状態監視システムを開発し、6月からN700S確認試験車に搭載して走行試験を開始することを発表した。

次期システムは1号車に搭載した現行システムに加えて、4号車に新規開発システムを搭載。新規システムは加速度計、レーザ変位計、ジャイロで構成し、レーザ光をレールに照射して、レールの左右方向のずれ、左右レール間の距離、左右レールの高低差を計測する。また計測速度も時速30km以上と低速での計測を可能とした。

まだ開発途上のシステムであり、現時点ではドクターイエローのほうが精度が高い。しかし、今後このシステムの精度が上がればドクターイエローの役割を奪う可能性は否定できない。

九州新幹線では営業車両で検測

実は九州新幹線では開業時より営業車両の800系による軌道・架線検測を行っている。現在はU007、U009系の台車に軌道検測ユニットを搭載し、U008編成は屋根上に架線検測ユニットを搭載している。

軌道検測ユニットは鉄道総合技術研究所が開発したもので、慣性正矢法で軌道を検測する。正矢法とは任意に張った2点間の弦の中点の相対変位を測定する方法で、初期のドクターイエローの3台車方式がこの正矢法だ。検測精度を高めるため、車体の歪みを最小限にするため車体剛性を上げているほか、台車に強固な検測枠が取り付けられている。

慣性正矢法は慣性測定法に正矢法の演算を組み合わせて、正矢法と同等の波形を出力するもの。800系では検測ユニットを台車枠中央に吊り下げている。本来は脱着式だが、実際には取り付けたままにしているようだ。なおJR東日本では同タイプのユニットを在来線通勤電車の床下に搭載している。

ちなみに現行のドクターイエローは偏心矢法を採用。これは不等間隔の点の相対変位を測定するものだ。台車には堅固な検測枠を備えるほか、車体の歪みを測定するためのレーザ基準線装置を搭載している。

九州新幹線の架線検測ユニットは明電舎の「カテナリーアイ」を使用。「カテナリーアイ」は架線の高さ・硬点測定とパンタグラフ撮影用カメラと照明、架線の摩耗・偏位測定用カメラと照明などで構成されたユニットで、検測速度は時速300kmまで対応する。

明電舎のカタログによると東海道・山陽新幹線用車両の碍子カバー内に搭載しての試験実績もあり、架線検測に関しても営業車両を使用することは可能なようだ。ただしJR東海から架線検測に関するアナウンスはない。

2020年度以降も活躍が約束されたドクターイエロー。直近の全検はT4編成が2015年8月、T5編成が2015年1月で、当時はこれが最後の全検かと言われていたが、再び全検を受ける可能性が出てきた。

なお、営業用新幹線電車の全検周期は3年だが、事業用車であるドクターイエローの周期は異なるようだ。現実にT5編成は全検から3年経過後も走っている。しかも、昨年の時点では浜松工場でドクターイエローの全検はしないとJR東海側は説明しており、実際にどうなるかは不透明だ。

ともあれ今後もドクターイエローに注目していく必要がありそうだ。

松沼 猛 『鉄おも!』編集長

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まつぬま たける / Takeru Matsunuma

大阪府出身。明治大学文学部卒。株式会社三栄書房に20年間在籍し、編集者として世界各地を飛び回った。2008年12月から『鉄道のテクノロジー』編集長を務めた後、2013年5月に独立。現在は『鉄おも!』編集長のほか、『鉄道ジャーナル』『ニューモデルマガジンX』『カーグッズマガジン』、鉄道、自動車関連ムックなどに執筆。

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