富士フイルム、先見えぬ買収と沈黙の古森氏 説明に株主の「納得感」が不十分だったワケ
注目が集まった株主総会だったが、大きな波乱は起きなかった。
6月28日、富士フイルムホールディングス(HD)は株主総会を開催。昨年の株主総会は、富士ゼロックスのニュージーランド・オーストラリア子会社で不正会計が発覚した直後だったことから、多くの株主が押し寄せた。
だが今年は報道陣の注目に反して平常運行に戻ったようだ。開催時間は前年から10分短くなり1時間49分、出席した株主は560人(前年は843人)にとどまった。
来場の理由を株主に聞くと、異口同音に「米ゼロックス買収についてよく分からないため、説明を聞きに来た」と口をそろえた。だが、買収を主導した古森重隆会長兼CEOは最後まで一言も発することはなかった。
話題は米ゼロックスの買収問題に集中
富士フイルムHDの売上高・営業利益で4割を稼ぎ出すのが複合機・プリンターなどのドキュメント事業。そのほとんどを子会社である富士ゼロックスが占めている。
富士フイルムHDが、富士ゼロックスと米ゼロックスを経営統合し、子会社化すると発表したのは2018年1月のこと。日本のほかに中国や東南アジアなど経済成長が進む地域を商圏に持つ富士ゼロックスと、業績不振にあえぐ欧米を主な商圏とするゼロックスを統合することで重複機能を一元化、2022年度までに17億ドル(1870億円)のコスト削減効果を見込んだ。
しかし合計で15%以上の米ゼロックス株を持つ”物言う株主”カール・アイカーン氏やダーウィン・ディーソン氏が「米ゼロックスを過小評価している」として反発を強めた。
米ゼロックスの取締役は多くが辞任し、5月には両株主が推薦するジョン・ヴィセンティン氏がCEOとして就任。富士フイルムHDとの関係が悪化していた。
株主総会では、助野健児社長が米ゼロックスとの統合経緯の説明に大きく時間を割いた。1月に締結した統合契約は法的拘束力を持つもので、「本経営統合は富士ゼロックスとゼロックスの未来にとって最良の選択」と強調した。
また、「15%を占めるに過ぎない少数株主が支配する米ゼロックスの取締役会が、株主全体の意向に沿った経営をできるのか疑問だ」と語気を強めた。
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