まずは、ボルボの真骨頂であるデザインについてだ。実車を前に、デザイン部門筆頭副社長のロビン・ペイジ氏が詳しく解説してくれた。
特徴的なのは、車体前面から車体側面に向かう力強いキャラクターライン。後席ドアから車体後部に向かって複数のラインをしっかりと描くことで、筋肉質なイメージを強調した。これは、ボディサイズが大きい「S90」とは違い、先にフルモデルチェンジしたワゴンの「V60」と同様のデザイン手法だ。
フロントマスクも「V60」との共通性があり、ボルボが「トールハンマー」と呼ぶT型のLEDデイタイムライトの全体形状によって、車体の横方向に低く、そしてズッシリとしたイメージを創出している。
また、安全性能について重要な役割を成すレーダーセンサーを、フロントマスク中央のボルボロゴマークの中に目立たないように埋め込んだ。
ひととおりの説明を聞いたところで、セダンデザインのトレンドについて聞いた。これまで北米市場全体で、セダンの販売量が大きいことが定説となってきたが、近年は小型・中型セダンから小型・中型SUVへのシフトが進み、そうした中でフォードが北米セダン市場から撤退を表明する事態に達した。
こうした中でボルボはどのように対応していくのか。ペイジ氏は「確かに大きな市場変化が起きている。正直なところ5年、10年先に消費者のセダンに対する意識がどこまで変わるかを想定することは難しい。われわれとしては現地点で、これまでの蓄積を集約した形がこのS60ということだ」と本音を漏らした。
北米市場では当面、日系や韓国系など2万~3万ドル(220万~330万円)の価格帯のセダンの販売量は減少し続ける可能性があるが、一方でボルボやドイツのジャーマン3(メルセデスベンツ、BMW、アウディ)を含めた4万ドル(440万円)以上のプレミアムセダンでは安定した成長が見込まれるのかもしれない。
2010年という大転換期
次に、研究開発部門の筆頭副社長、ヘンリック・グリーン氏らを交えてボルボのクルマ造りの現状について聞いた。その中で、彼らが強調したのが「2010年以降の大きな変化」という言葉だ。
この年、ボルボの親会社は、米フォードから中国の吉利集団に変わった。フォード時代には、ランドローバー、ジャガー、ベントレーとともにプレミアム・オートモーティブ・グループ(PAG) との括りの中で、フォードとの車体共有がなかば義務づけられる事業計画の中での研究開発を強いられた。それが2010年に大きく変わった。
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