ボルボが進出63年目で建てた米国工場の正体 現地生産地をサウスカロライナに決めたワケ

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まず、新工場の場所をサウスカロライナ州に決めた理由についてサミュエルソンCEOは次の3点を挙げた。

①港が近いことなど物流の便が良いこと

②部品メーカーの所在地が近いこと

③そして地元自治体が電力設備の整備や工場従業者のリクルート支援などに積極的だった

加えて同氏は、さまざまな候補地があったが、地元自治体との関係でサウスカロライナ州が最適だったと説明した。

次に、ボルボの親会社である中国の吉利集団との、ボルボの新規事業に対する影響について聞かれると「あくまでもボルボは独立した企業であり、経営方針についてもボルボが主体であることに変わりはない」と強調した。

さらに、アメリカと中国、そしてアメリカとEUとの輸出入にかかる関税について両国の間で駆け引きがあることについて聞かれると「政治的な案件でのコメントは避けるが、関税への対応を考えるうえで、われわれにとって主要な販売国で生産することに大きな意味がある」とチャールストン工場建設の意義を示した。

工場内部は広く、当面の生産は1ラインだが、ラインを増強して生産能力拡大も可能に思える(筆者撮影)

ボルボは現在、オートマチックトランスミッションをトヨタ自動車系のアイシンAWから導入しており、また同じくトヨタ系のデンソーとの会合を進めるなどの動きがある。ボルボが動力系の電動化や自動運転の量産化を急ぐ中、日本企業との関係について筆者が聞くと「電池技術を含めて、さまざまな案件を視野に日本企業との関係を考慮していきたい」と答えるにとどめた。

ついに、アメリカでの生産が始まる

1927年創業のボルボがアメリカに進出して63年目。ついに、アメリカでの生産が始まる。アメリカ人がボルボを作ることについて、サミュエルソンCEOは「チームワークやクリエイティビティで、アメリカとスウェーデンとの共通性が多くある」と今後の生産についての課題は多くないと指摘する。

また、アメリカ製のボルボをアメリカの消費者がどう見るかについては「消費者に対して、そしてディーラーに対して、われわれはローカルシチズン(地元の人間)として、彼らからの意見をしっかりと聞いてより良い製品造りに活かしていきたい。そうしたわれわれの仕事の進め方を、感情的な側面からも彼らは理解してくれると思う」とボルボの新しい挑戦に対して自信を示した。

また、トランプ政権が自動車産業界に対して強く要求している「Made in America」との政治姿勢については、多くを語らなかった。確かに、ボルボがチヤールストンへの工場進出を決めたのはトランプ政権の誕生前である。

桃田 健史 ジャーナリスト

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ももた けんじ / Kenji Momota

桐蔭学園中学校・高等学校、東海大学工学部動力機械工学科卒業。
専門は世界自動車産業。その周辺分野として、エネルギー、IT、高齢化問題等をカバー。日米を拠点に各国で取材活動を続ける。一般誌、技術専門誌、各種自動車関連媒体等への執筆。インディカー、NASCAR等、レーシングドライバーとしての経歴を活かし、テレビのレース番組の解説担当。海外モーターショーなどテレビ解説。近年の取材対象は、先進国から新興国へのパラファイムシフト、EV等の車両電動化、そして情報通信のテレマティクス。

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