ボルボが進出63年目で建てた米国工場の正体 現地生産地をサウスカロライナに決めたワケ

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2017年の世界総販売台数は前年比7%増の57万1577台。成長の牽引力となったのは、前年比25.8%増となった中国市場だ。

2018年に入っても、ボルボの販売は好調で、直近の1~5月累積販売台数では、前年同期比13.6%増の25万3581台を記録した。内訳を地域別で見ると、欧州が4.4%増の13万1267台、中国が19.1%増の4万4792台、そしてアメリカが40.9%増の3万7754台と大きく伸びて、日本を含めたその他の地域も20.3%増の3万4768台となった。

車種別で5月単月を見ると、中型SUVの「XC60」がトップで1万6171台、「XC90」が7979台、そして小型のV40とV40クロスオーバーの5844台と続く。

ボディ、塗装、最終組み立ての3工場がブリッジにつながり、その中をボディが移動する(筆者撮影)

ボルボ関係者によると、今年に入ってのアメリカ市場の好調は「XC90」と「XC60 」が要因だが、アメリカ人はボディサイズの大きな「XC90」を好む傾向が強いと指摘する。

今回の式典で、在米スウェーデン大使が明らかにしたように、チャールストン工場の建設が決まったのは2015年だ。ボルボとしては、その時点で3年先となる2018年にフルモデルチェンジの予定だった「S60」を主体に生産計画を立てていたが、昨今の市場動向を踏まえて次期「XC90」のチャールストン工場生産を前倒ししたというのが真相のようだ。

別の視点では、チャールストン工場をボルボブランドとして新しい共通車体となるスケーラブル・プロダクト・アーキテクチャー(SPA)のマザー工場とする思惑がある。

工場内の様子

工場内を見学したが、ボルボがA工場と呼ぶボディパーツ製作と溶接工程を行う施設、塗装工程のB工場、そして最終組み立て工程のC工場がそれぞれ単独の母屋となっており、その間を地上から10メートルほどの高さにあるブリッジの中をボディが移動する仕組みだ。

エンジンはスウェーデンのシェブデ工場から輸入し、その他の部品は日本企業を含むアメリカ国内に拠点を置く部品メーカーから購入する。

現在、チャールストン工場では8月27日からの本格稼働に向けて、社員教育を含めた試験的生産を行っており、A工場では溶接が終わったボディの精度を上げるための仕上げ工程を見ることができた。工場担当者によると、稼働開始時点では約350人の1直体制で時間当たり50台規模の生産を立ち上げ、近い将来に1500人体制、そして次期XC90が導入される予定の2021年には3900人体制で年産能力15万台のフル稼働を目指すという。

8月27日の本格稼働に向けて試験的な生産を続けている(写真:ボルボ)

式典の後、報道陣が10人程度のグループに分かれボルボ本社幹部を囲んだ意見交換を行った。その中で、サミュエルソンCEOには各国メディアから突っ込んだ内容の質問が飛んだ。

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