福島作業員を蝕む「違法雇用」と「過酷労働」 作業員を襲う、もうひとつの「汚染」
[いわき市(福島県) 25日 ロイター] - 高濃度の放射線にさらされている東京電力<9501.T>福島第1原子力発電所の廃炉・除染現場で、作業員を蝕むもうひとつの「汚染」が進行している。不透明な雇用契約や給料の中抜きが横行し、時には暴力団も介在する劣悪な労働環境の存在だ。
東電や大手建設会社を頂点とする雇用ピラミッドの底辺で、下請け作業員に対する不当な取り扱いは後を絶たず、除染や廃炉作業への悪影響も懸念されている。
「原発ジプシー」。 福島第1原発をはじめとする国内の原発が操業を開始した1970年代から、原発で働く末端労働者は、こんな呼び名がつくほど不当で不安定な雇用状態に置かれてきた。電力会社の正社員ではなく、保全業務の受託会社に一時的に雇用される彼らの多くは日雇い労働者で、原発を転々としながら、生計を立てる。賃金の未払いや労働災害のトラブルも多く、原発労働者に対する待遇改善の必要性はこれまでも声高に叫ばれてきた。
しかし、福島第1の廃炉および除染現場では、こうした数十年に及ぶ原発労働者への不当行為が改善されるどころか、より大規模に繰り返されている可能性があることが、80人余りの作業員、雇用主、行政・企業関係者にロイターが行った取材で浮かび上がってきた。
福島第1では、800程度の企業が廃炉作業などに従事し、除染作業にはさらに何百もの企業が加わるという、過去に例のない大掛かりな事故処理が続いている。現場の下請け作業員は慢性的に不足しており、あっせん業者が生活困窮者をかき集めて人員を補充、さらに給与をピンハネするケースも少なくない。下請け企業の多くは原発作業に携わった経験がなく、一部は反社会的勢力にも絡んでいるのが実態だ。