31歳でプロ野球を去った夫を変えた妻の覚悟 自ら稼ぐ力をつけ失意の男を厳しく鼓舞した
一方、夫・剛さんは、オリックスでも、結果を出せず3度目のトレード。今度の移籍先は、横浜だった。
平均引退年齢が29歳のプロ野球の世界で、このとき、剛さんはすでに31歳。ここで結果を出さなければ後がない、という崖っぷちのところまで来ていた。
しかし、横浜では、1度も1軍に上がることができず、2011年のオフに戦力外通告。それでも、野球を諦め切れず“現役を続ける”わずかな望みをかけ合同トライアウトに挑戦したが、どの球団からも声は掛からず現役引退を余儀なくされた。
野球一筋で頑張ってきた剛さんには、野球以外やりたいことなどなかった。31歳の若さで職を失った夫の、魂が抜けたような姿に、彩子さんは心を痛めた。
「主人のことが心配でしたね。結構、自分の中に感情を閉じ込めるタイプなので、朝起きて主人がいなかったらどうしようとか考えてしまった」(彩子さん)
「外にも出たくなかったし、人にも会いたくなかった」
一方、剛さんは……。
「最初の6カ月ぐらいは、ホント何もしたくなくて。外にも出たくないし、人にも会いたくなくて…ちょっと病んでいたのかな」(剛さん)
そのとき、妻は心を鬼にした。このままでは、夫はダメになってしまう。彩子さんは夫にこう告げた。
「1年以内に仕事が見つからなかったら離婚しましょう」
妻が放ったこの言葉は、夫の胸に突き刺さった。彩子さんは剛さんと本当に別れようと思っていたわけではない。夫の性格上、強く言わないと分かってもらえないと思った上での行動だった。
そんな彩子さんの想いを知った剛さんは、業種を問わず、およそ50社に、履歴書を送った。しかし、現実は厳しく、ほとんどの会社で書類選考すら通らなかった。そんな剛さんに手を差し伸べてくれたのが、あるスポーツ用品の販売代理店だった。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら