65歳以降「毎月5万円稼ぐ人」に訪れる幸福 「アラ還」になる前におカネの戦略を考える

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再雇用などで働き続けると、健康保険に加入できるというメリットもあります。

健康保険には、病気やケガで3日以上継続して仕事を休んだ場合、休んだ日の4日目から賃金の3分の2程度が最長1年6カ月にわたって支給される「傷病手当金」という給付があります。高齢になるほど病気などの可能性は高まりますから、60歳以降も働いて健康保険に加入することはメリットが大きいといえます。ちなみに傷病手当金については、病気の種類は問われませんし、休日に負ったケガでも対象になります。また加入している健康保険組合によっては、1カ月の医療費の自己負担が2万円を超えた分が給付されるなどの「付加給付」が受けられることもあります。これも健康保険のメリットです。専業主婦の妻など、扶養家族もそれまで同様に給付が受けられます。もちろん、家族の分の保険料はかかりません。

さらに、両親や配偶者などの親族に介護が必要になった場合には、93日までの「介護休業」や、年5日までの「介護休暇」も取得できますし、介護休業して賃金が減れば「介護給付金」の支給を受けることもできます(介護休業などについては、【「介護離職」を回避するための5つのポイント】で述べていますので、参考にしてください)。

このように、収入が減ったとしても、雇用保険や健康保険への加入が続くことで、手厚い保障が受けられるのです。再雇用を受ける場合は、雇用契約についてもしっかり確認し、不明点は遠慮なく質問しましょう。特に重要なのは、「労働契約の期間に関する事項」です。雇用期間について定めがあるか、また更新の有無や基準を確認します。期間の定めがあっても、反復労働契約が更新されて通算5年を超えると、本人の申し込みによって期間の定めのない労働契約に転換されます。つまり、本人が辞職を申し出ないかぎり働けることになっています。

また健康保険や雇用保険には加入しても、会社の福利厚生制度からは外れる可能性がありますから、その点についても確認が必要です。企業年金の加入が続くのか、60歳以降の分も退職金が支払われるか、支払われる場合、どのような計算で金額が決まるか、などを確認しましょう。

65歳以降は「夫婦で月5万円」をめざす

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人生100年時代には、なるべく長く働くことが重要です。65歳までフルタイムで働くことも、今や普通になってきています。私は、65歳以降も、たとえば「月5万円程度」など、一定の目標を決めて、毎月の生活の補てんに働くのが望ましいと考えています。

たとえば「週に2日だけ働く」、「午前中だけ働く」などでも、生活が規則正しくなりますし、家族以外の人と接することが刺激になり、心身の健康が保ちやすい、というメリットもあります。夫と妻両方併せて月5万円というのでもよくて、「別々の時間に働くことで夫婦それぞれに1人の時間ができるから、夫婦喧嘩が減った」という人もいます。

前述のとおり、高齢夫婦の生活費が平均で約26万円とすると、年金が夫婦で20万円、賃金が5万円となれば、基本生活費だけなら資産をそれほど取り崩さずに済み、病気や介護に備えることができます。少しでもいいから、長く、できれば楽しみながら働く。そのためには65歳以降の仕事につながるように趣味を極める、人間関係を広げる、といったことも考えるのが理想的です。60歳~65歳の間、仕事はそこそこ頑張りながら、65歳以降への準備に時間や労力を使うというのが、私の提案です。

井戸 美枝 ファイナンシャルプランナー

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いど みえ / Mie Ido

神戸市生まれ。 関西と東京に事務所を持ち、年50回以上搭乗するフリークエントフライヤー。講演や執筆、テレビ、ラジオ出演などを通じ、生活に身近な経済問題をはじめ、年金・社会保障問題を専門とする。『世界一やさしい年金の本』(東洋経済新報社)、『知らないと損をする国からもらえるお金の本』(角川SSC新書)、『現役女子のおカネ計画』(時事通信社)、『一般論はもういいので、私の老後のお金「答え」をください!』(日経BP)『親の終活、夫婦の老活 インフレに負けない「安心家計術」』(朝日新書)など著書多数(ホームページ​経済エッセイスト井戸美枝FBページ)。

 

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