ジャカルタ都市鉄道計画「寒すぎる」内部事情 日本側コンサルの調整機能に問題はないのか

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LRTジャカルタは東ジャカルタの繁華街クラパガディン地区と今年8月18日開催のアジア競技大会に向けに建設が進む自転車競技場が隣接するフェロドローム間5.8kmを結ぶ高架式軽量軌道線である。

ジャカルタ州内におけるLRT建設計画は、議会で反対論も根強かったが、第18回アジア競技大会のインドネシア開催が決定されたことを受け、アホック前ジャカルタ州知事(初の華人首長、その後のコーラン侮辱発言により失脚)任期中の2015年に着工が決定し、今年8月13日の開業を目指している。

全額がジャカルタ特別州予算によって賄われ、州営、国営の建設会社によって土木工事が行われているものの、イギリス系コンサルタントおよび韓国鉄道建設会社が、設計や運行管理支援を行っており、事実上韓国主導のプロジェクトと言える。わずか半年ほどで事業化調査と予備調査を終え、2016年6月に建設着工にこぎ着けた。

区間が5.8kmと短いとはいえ、アジア競技大会開幕に間に合わせるには、かなり無理のあるスケジュールである。車両については現代ロテムが受注からわずか1年3カ月で納入したことから、当局は短期間での調達をアピール材料にしているが、実は同じく今年度開業予定とされる韓国金浦空港と市内を結ぶ軽量鉄道とほぼ同設計の車両を納品したにすぎない。

本当に8月に開業するのか

5月下旬現在、車両は導入予定8編成のうち、1編成だけ到着したものの、肝心の車庫がない。州営住宅と一体に整備している都合上、完工していないのだ。車両はクラパガディン駅近くの高架線にポツンと留置されている。集電システムは第三軌条式であるため、架線は設置されないのだが、まだ通電しておらず、試験走行開始は6月下旬と言われている。

それでも各駅部は目下工事中であり、来年開業のMRTJの駅と比べても、それと同等か、それより遅れているという印象で、本当に8月に開業するのかと疑わしくなってくる。

工事中のLRT ジャカルタ・フェロドローム駅(筆者撮影)

とはいえ、現政権が掲げる目玉政策であったジャカルタ―バンドン間高速鉄道の2019年開業は不可能とする政府の公式見解が発表された今、来年の大統領選挙を控えるジョコウィ大統領にとってアジア大会の成功は喫緊の課題である。現在の世論調査では、ジョコウィ大統領の再選がほぼ確定と見られているが、隣国マレーシアでは、先日の総選挙で大方の予想を反し、政権交代が実現、ナジブ首相は退陣に追い込まれた。

同じく華人経済圏で起きたこの政権交代劇は、インドネシアにとっても決して対岸の火事ではない。国民はおおよそにして口にしないが、中国資本、そして中国人労働者の大流入に対する不満は積もりつつある。

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