ジャカルタ都市鉄道計画「寒すぎる」内部事情 日本側コンサルの調整機能に問題はないのか

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ちなみに、ジャカルタとアジア競技大会の共同開催都市であるパレンバンにおいても、空港と市内を経由して競技場を結ぶLRTが大会までの開業を目指している。こちらは国家予算で賄われ、運営は国営企業の1つであるインドネシア鉄道(KAI)が行う。

高速道路、港湾施設、空港などのインフラ整備も道半ばである中で、国民の注目を一身に集めるアジア競技大会と国内初のLRT開業は、4年目に突入したにもかかわらず目立った施策を打ち出せていないでいるジョコウィ政権にとって、現政権の功績をアピールする最後で最大のチャンスであるのだ。

8月13日に電車は走るが、本開業ではない

では、LRTジャカルタは本当に開業できるのか、関係者に話を聞いてみたところ、予想どおりの答えが返ってきた。2017年12月16日付記事「信号未完成「空港線」はぶっつけ本番で走った」と同様に、8月13日に電車は走るが、本開業ではないということだ。

他線区と接続しない完全独立路線でかつ短距離であり、複線の線路上に1編成ずつ(車両2本を併結し、1編成4両になる模様)車両を置き、単線並列として往復させるという非常に原始的なシステムであり、安全性は保障されている。

実は同様の扱いをジャカルタ、スカルノハッタ国際空港内のターミナル間APM(全自動無人運転車両システム)でも行っており、これも韓国の宇進産電が車両やシステムを収めたが、整備が追いついておらず、無人と称しながら単線並列の有人運転を行い、保安装置もないため、時速30km以下での走行を余儀なくされている。

高架線上に留め置かれたLRT車両(筆者撮影)

ただ、このLRTジャカルタを笑い飛ばすのは時期尚早である。ひるがえって、オールジャパンの総力を結集したとされるMRTJの現状を見るに、それはひとごとではないのではないかとさえ感じる。MRTJの車両は車庫にこそ留置されているが、4月に到着した車両はこの2カ月間、まったく動いていない。LRTジャカルタと同じく架線への通電が始まっていないためだ。しかも、到着した2編成分のみ車庫は完成しているが、ほかのスペースはまだ工事中だ。

荷重測定も車両限界測定も行っていないにもかかわらず、LRTジャカルタがいきなり高架上に車両を載線したということ自体が問題だ。では、MRTJはというと、報道公開時の社長スピーチなどから推測するに、こちらも6月下旬、レバラン休暇明けごろから、いよいよ走行試験が始まるものと思われる。だが、現時点においてMRTJ線路上に軌道検測車両を走らせたという報道もない。どうやって走行試験を開始するつもりなのだろうか。

そして今度は、走行試験を開始すれば、8月までには客を乗せられるなんていう声も出るのであろう。日本の面目を保つために、もしそんな声が日本側から出たとしたら、あまりにも恥ずかしいことだ。

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