ソニー、不振でもスマホから撤退しないワケ 中計から見えた「2020年代の成長戦略」

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縮小

2018年3月期における過去最高益の達成は為替要因なども絡んでおり、ソニーの経営が安定したとは言い切れない段階だ。次の成長戦略を力強く描いていくためにも、今は基礎体力をつける時期ではないだろうか。

4月27日に行われた2018年3月期の決算発表で、代表執行役EVP CFOに就任した十時裕樹氏は「これまでソニーは5000億円以上の営業利益を継続して出したことがない。だからこそ、2018年度からの3カ年計画では、利益を安定して出し続けることが重要だ」と話した。

スマートフォン事業を継続する理由

もちろん、財務責任者としての言葉なのだから、堅実路線を目指すコメントは驚くに値しない。しかしこのとき、同時に十時氏は縮小を続けるスマートフォン事業を継続する理由に関して、次のようにも話していた。

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「次世代通信技術の5Gはスマートフォン以外のさまざまな製品に入っていく。5G時代、ソニーグループ全体で通信技術を展開していくには、ソニー社内にその技術を有していなければならない」

そのために、たとえ販売台数が年間1000万台というボリュームに縮小したとしても事業継続できる体制に組織を再構築するとの方針を「経営陣の総意」と強調したうえで話した。実はこの考え方は拡大路線だったスマートフォン戦略に急ブレーキをかけた2014年末からまったくブレていない。

ソニーは、スマートフォンの時代には乗り遅れた。しかし、次の変節点が2020年代になるとやってくる。次の変節点とは、モノ、デバイスがネットワークへと接続され、社会全体がネットワークで繋がるといわれる5G時代の到来だ。

この変節点に、ソニーが真っ先にアクセルを踏んでいくことを狙うならば、事業体質の改善が進んだ今こそ、次の期で堅実に利益を拾いながらも、水面下では反転攻勢のための「仕込み」をするべき時期だろう。そうした意味では、この中計が終わる2021年末までは、大きなサプライズはないかもしれない。

しかし、本当の意味でソニーが復活し、成長していくためには、「仕込み」の時期は重要だ。2020年代以降の飛躍を信じ、長い目でソニーの経営を見る必要があるだろう。

本田 雅一 ITジャーナリスト

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ほんだ まさかず / Masakazu Honda

IT、モバイル、オーディオ&ビジュアル、コンテンツビジネス、ネットワークサービス、インターネットカルチャー。テクノロジーとインターネットで結ばれたデジタルライフスタイル、および関連する技術や企業、市場動向について、知識欲の湧く分野全般をカバーするコラムニスト。Impress Watchがサービスインした電子雑誌『MAGon』を通じ、「本田雅一のモバイル通信リターンズ」を創刊。著書に『iCloudとクラウドメディアの夜明け』(ソフトバンク)、『これからスマートフォンが起こすこと。』(東洋経済新報社)。

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