スバルはどうして苦境から抜け出せないのか 米国で新型車続々投入でも先行きは「茨の道」
現在、スバルの「中国プロジェクト準備室」には担当役員がいるだけで、実際に業務を行うチームはない。ただ、スバルにも現地生産のチャンスが出てきた。今年4月、中国政府が自動車生産の外資規制を2022年までに撤廃すると発表したのだ。規制撤廃で、外資は全額出資の現地法人を設立することも可能になる。
これに対し、吉永社長は「生産の前に販売を立て直すのが優先。現地生産を始めようとは考えていない」と述べる。自動車業界では最低でも10万台売れないと現地生産の採算が取れないとの考えが一般的であり、スバルのスタンスは妥当とも言える。
5月22日、中国政府は輸入乗用車に現在25%課している関税を7月1日から15%に引き下げると発表した。スバルにとっては追い風になる。自動車メーカーとして今後成長するためには、もはや中国という巨大市場を横目で眺めているわけにはいかなくなっている。
中国の電動車対応でも、スバルは難しい立ち位置にいる。2019年から中国に導入されるNEV(新エネルギー車)規制では、3万台以上販売しているメーカーは、規制に対応した電気自動車(EV)やPHEV、燃料電池車(FCV)といった電動車を販売しなければ罰金を科される。
スバルは今期、中国で約3万台の販売を見込む。NEV規制にギリギリ当てはまる可能性のある同社は、来期以降は電動車を新たに発売するか、罰金を支払うか、天秤にかけることになる。ただ、電動車は台数が出にくく、収益性も低いため、当面は中国市場への投入の可能性は低いとみられる。
新社長は成長戦略を描けるか
スバルはこの1年で、株価も大きく値を下げた。2016年に5000円を超え好調だった株価は、2017年5月に2018年3月期の業績予想を2期連続の営業減益としたことで4000円を割り込む。市場は回復の端緒を探っていたが、昨秋の不正検査問題発覚や今回の決算発表に失望。足元では3600円前後で低迷を続ける。あるアナリストは、「完成検査の件があり、今は底ではあるが、もっとも勢いのあった水準までは戻らないだろう」と話す。
今年6月には中村知美専務執行役員が社長に就任し、7月には新中期経営ビジョンが発表される。中村専務は、米国事業を長く担当した営業畑の出身だ。完成検査問題を乗り越え、今期以降どのような成長戦略を描くのか。スバル刷新は新社長の双肩にかかっている。
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