スバルはどうして苦境から抜け出せないのか 米国で新型車続々投入でも先行きは「茨の道」
米国市場ではSUVなど大型車が人気だが、競争の激化で販売店の値引きの原資となるインセンティブ(販売奨励金)は上昇が続く。これまでスバルは商品性の高さを武器にインセンティブを抑制できていた。
しかし、去年夏に1台当たりの平均が1000ドルを突破し、足元では2000ドル前後で推移する。今期は「インセンティブに加え、新型車投入で広告宣伝費が増える」(岡田CFO)ことも収益を圧迫する。
上昇しているとはいえ、スバルのインセンティブは業界平均の半分の水準で優等生だ。ただ、米国の新車市場全体はピークアウトしており、SUVが今後も販売台数をキープできるかは不透明だ。
スバルにはもともと米国で生産は逼迫状態にあるというボトルネックもあり、中長期的にみて、米国で大きく収益を引き上げることは容易ではない。スバルの現状は、2008年のリーマンショック前、ホンダが長らく続けていた「米国一本足打法」と言われてきた米国依存と似ている。
日本と北米以外に、スバルが伸ばせる市場はあるのか。特に懸念されるのが、世界の各メーカーが注力する中国での弱さだ。トヨタ自動車・日産自動車・ホンダは年間100万台以上、マツダも30万台を販売する中、スバルは5万台にも届かない。中国の販売網は非常に弱く、戦略もほとんど見えてこない。
中国で売れていないもどかしさ
もともと中国では苦戦していたが、2018年3月期の販売台数は約2万7000台と前期比で17%も減少した。この状態について前期の中間決算では、吉永社長も「中国のインセンティブ競争に勝てない」と述べ、収益を重視して、台数競争からは距離を置いていることを認めていた。しかし、結局のところ、なぜ中国市場の消費者に訴求できていないかが重要だ。
「(地域ごとに)個性・特徴を明確に伝える必要がある。中国では『安全と楽しさ』が伝わりにくい。4輪駆動の走りのよさなどを訴えた方がよいかもしれない」(吉永社長)。スバルは今後中国で、マーケティングの手法を変え、3万台まで販売を回復させるという。中国では力強いSUVが人気。走行性能の高いスバルのSUVの特性を押し出せば、ニーズとマッチしそうだ。
また、スバルは中国に生産工場を置かず、日本から全量を輸出している。中国では自動車の現地生産は現地企業との合弁が義務づけられている。スバルも2011年に中国の奇瑞(きずい)汽車と合弁工場を作ろうとして、中国政府に申請したが認められなかった。スバルに約16%出資しているトヨタが合弁企業を2社設立していることが影響しているという見方が強い。外資メーカーが合弁を組めるのは2社までというルールがあるからだ。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら