エプソンが「インクジェット」に命懸けの理由

碓井社長「ペーパーレスを言い訳にしない」

――ヒットにつながったのはやはり技術だと。

いや、大容量のインクジェットプリンターは、これまで開発してきたものと比べれば技術的にはある意味”大したもの”ではない。タンクを取って付けたようなものだから。だけど新興国では、プリンターのそもそもの機能が問われる。それは「安く印刷できる」ということだ。

日本の技術者が陥りがちなのが、社会のニーズに応えているかということを考えずに自分の技術に埋もれてしまうこと。世の中の人たちの生活習慣をどう変えていきたいかをイメージしながらの商品作りでは、日本企業よりも欧米のソフトウエア企業が得意。中国などの企業からも見習うべき部分がある。

オフィス向けでレーザーに対抗できるか

――オフィス向け複合機ではシェアが低いですが、ここでもインクジェット製品を投入しました。最高毎分100枚という高速印刷が特徴です。

高速印刷を売りにするオフィス向けのインクジェット複合機(撮影:今井康一)

2017年に発売した高速インクジェット複合機はもう少し売れてほしかった。競争は激しい。安売りすれば数はさばけるかもしれないが、自分たちの良さを訴求しながら導入を進めたいので、一定の制約は避けられない。

だが、進捗は確実にあった。やはり環境面に対する反応は非常によかったし、実際に導入した顧客はたくさん印刷してくれている。そういう人たちのニーズはしっかりつかめたんじゃないか。まだ受注には結びついていないけれども案件は積み上がっているので、かなりのパーセンテージで今年は伸ばせると思う。

――どれくらいの事業規模を目指しますか。

競合となるセグメントのレーザープリンターは年間の販売数量が約55万台。今後3~5年以内にそのうちの3~5%のシェアは取っていきたい。将来の社会を考えれば、インクジェットがメジャーになる。ただ5年ですべての車が電気自動車に変わるわけではないように、3~4年でキヤノンやリコーと同規模を目指すのは現実的ではない。

私たちはこれにしか懸けていないんでね。生産性や知的な創造性がますます発揮できる社会になっていく中で、プリンティングで生き残るとしたらインクジェットしかないと。われわれは「インクジェットイノベーション」と呼んでいる。リスクを取ってでも新しい社会を自分たちが中心になって作ろうという志のもとに活動をしている。

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