「鉄道が消えると街は廃れる」はウソだった! 北海道・増毛「廃線で困ったことは何もない」
地方の鉄道にとって重要な“客”といえば免許を持たない通学の学生たちや病院通いの高齢者たち。しかし、彼らもめったに鉄道を利用することはなかった。確かに、筆者が留萌本線運転最終日に増毛を訪れて取材した際も、地元の人たちは鉄道への郷愁こそ語れども日常的に使っていたという声はあまり聞かれなかった。
「なくなるのは寂しいけどね、乗ったのはずーっと昔。ここ数十年はまったく乗ってなかったね」(地元在住のおばあちゃん)
「実は一度も乗ったことはないんです。学校にはバスで行くし、家族で遊びに行くとなったら札幌まで車で行っちゃうから……」(地元の高校生)
数十年前から日常の足ではなかった
かくのごとく、増毛の町にとって鉄道はもはや日常の“足”ではなかったのである。さらに、こうした状況になっていたのは最近のことではなく、数十年も昔から。
「30年くらい前だったかな、沿岸バスが通学定期券を値下げしたんです。それで一気に学生たちが鉄道からバスに切り替えた。それからはもうずっと留萌本線はガラガラでした。留萌市内にある高校は駅から遠くて留萌駅から歩けば30分くらいかかるし、ダイヤも増毛の子どもたちの通学には合わなくて朝7時くらいに学校に着いてしまう。だから、直接学校の近くまで行ってくれるバスのほうがありがたいんです」(増毛町担当者)
さらに、その不便さは病院通いの高齢者たちにとっても同じ。かつて瀬越駅近くにあった留萌市立病院は駅から遠く離れた現在地(留萌市東雲町、留萌高校近く)に移転し、鉄道を使っての通院は現実的ではなくなった。商業施設にしても同様で、鉄道利用を前提とする街づくりはほとんど行われてこなかったのが実情なのだ。となれば、利用者の鉄道離れが起こるのも当然の流れ。
「特に廃止される数年前からは冬になるとすぐに長期運転見合わせでしたからね。安全のためということはわかりますが、頻繁に運休になる鉄道は不便ですよ」(増毛町担当者)
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