元日本代表GK楢崎が強調する「腹のくくり方」 2度の16強入りを知る男の歓喜と落胆のW杯

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しかし、岡田監督率いる日本代表の大会前の状態は最悪だった。5月の韓国との壮行試合(埼玉)を0-2で完敗した時は危機感が最高潮に達し、指揮官が進退伺を申し出る事態にまで発展した。直前合宿地のスイス・サースフェーで、岡田監督は超守備的戦術へのシフトを決断。

最終調整に当たる国際親善試合のイングランド戦(グラーツ)から楢崎と川島永嗣(フランス・メス)を入れ替え、キャプテンも中澤佑二(J1・横浜F・マリノス)から長谷部誠(ドイツ・フランクフルト)へと変更する。これはあまりにも衝撃的な出来事だった。

自分の中で背負うものが大きくなりすぎた

「『代表はもう南アで終わり』という気持ちがあったんで、すべてを懸けて臨んでいたけど、いかんせん本大会までの流れがよくなかった。それによって自分の中でも背負うものが大きくなりすぎたのはあるかもしれない。『結果が出てないな』『何とかしなきゃいけない』と考えすぎているのを、岡田さんに見透かされた気がしますね(苦笑)。

ただ、僕自身は本大会になれば絶対にうまくいくと思ってたし、そういう準備もしていた。自分が出て出場権を決めたチームも南アが初めてで、『絶対に本番も戦うんだ』という気持ちも強かった。

プレーヤーとしてもいちばんいい状態にありましたからね。だけど、イングランド戦直前に『永嗣、出ろ』とGKを代えられた。正直、ショックでしたよ。『このためにやってきたのに、いったい、自分は何をしてるんだろうな……』とね」

2010年のW杯南アフリカ大会の初戦カメルーン戦で国歌を聞く控えメンバー。左から3人目が楢崎正剛(写真:YUTAKA/アフロスポーツ)

楢崎、中澤のところに大ナタを振るうだけでなく、中村俊輔(J1・ジュビロ磐田)まで外した陣容で挑んだ日本は、初戦・カメルーン戦(ブルームフォンテーヌ)で本田圭佑(メキシコ・パチューカ)の先制点を守り切って勝利。

そこから快進撃を見せる。デンマークにも勝って2位通過し、決勝トーナメントに進出した。ラウンド16ではパラグアイとPK戦までもつれこんだ。惜しくも駒野友一(J2・アビスパ福岡)の失敗で8強入りはかなわなかったが、結果的に指揮官の大胆采配が奏功する。楢崎はチームの勝利を喜びつつも、複雑な心境のまま1カ月間を過ごしたという。

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