麻生発言「改ざんは個人の資質」に漂う違和感 「どの組織だって改ざんはありうる」は本当か

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

それでは、集団規範によって、組織の成員に共有されている価値観、行動様式で最優先されるものは何だろうか。それは成員が所属する組織が存続することである。当然といえば当然だが、そこに組織による不正や隠ぺいが生じる陥穽があるのだ。

たとえば企業全体としては法令順守を掲げていても、その下部組織が売り上げや純利益、あるいは製品の性能など数値で計れる場合に顕著なのだが、改ざんやその隠ぺいによって組織全体の目標を達成したことに偽装すれば、下部組織として生き残ることができる。

タコツボ化した組織内では法令違反が起こりやすい

社会的には法令違反は許されないし、一企業としても容認することは公式にはありえないが、縦割りされタコツボ化した組織内では法令違反が起こりやすい。これも社会心理学でいう「集団の凝集性」が機能するためである。集団の継続過程で、各成員は他の成員の持つ規範との関係で思考するようになるため、所属集団による規範形成力が強まるのだ。

端的に言うと、法令を遵守するより優先されるのは、自分たちが所属する下部組織が会社の中で生き残ることだ。そしてこれは同時に集団の凝集性(まとまりや結束力)を高度化し成員の連帯が生じる。集団規範は同調者に対する報酬の規準として機能する一方で、逸脱者に対する制裁機能も持つので、同調圧力に抗して疑問の声を上げることは困難である。

社会心理学では組織における意思決定や組織性犯罪の成り立ちについての数多くの研究がある。こうした知見を体系的にビジネス現場に取り入れなければ、組織による情報の改ざん隠ぺいを防ぐことは難しいだろう。

志村 昌彦 ジャーナリスト

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

しむら まさひこ / Masahiko Shimura

1964年生まれ。早大卒。生命保険会社国際投資部門勤務後、総合情報誌編集記者を経て心理学系雑誌編集長を務める。

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
キャリア・教育の人気記事