働き方改革は案外バカにできない成果を生む 少なくとも男女平等にようやく向かう

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上記を踏まえて、これから挙げることについて考えてもらいたい。

現在、日本には同一労働同一賃金と労働時間削減のような社会民主主義的な目標を推進する保守与党がある。確かに自民党は左派野党と同じ理由からこれらの政策を支持しているわけでも、また野党と同じ方法でこれらを実施するわけではない。自民党は同一の権利の推進よりも、労働力の増大、生産性の向上、消費への刺激、そして出生率の上昇に関心を抱いている。

女性の社会参加は生産性向上につながる

にもかかわらず自民党および野党は労働改革の主要な部分について同意している。ある労働組合代表は私に向かってこう嘆いた。「自民党幹部は利口だ。彼らは選挙に勝ちたがっている。そのため彼らは野党から最高のアイデアを奪い、自分たちのものにしようとしている」

事実、これは自民党の伝統的な戦略だ。自民党幹部は1970年代にはより強力な環境保護と、より高額な社会福祉への支出という野党の提案を採用していた。小泉純一郎元首相は、2000年代に自民党が恩顧主義的であり腐敗しているという野党による批判を受け入れた。そして今、安倍首相は女性活躍の推進と労働生活の改善とを受け入れている。

男女平等を促し、労働者の福祉を向上させることは、より多くの女性が労働力に加わり、全体的な労働生産性向上につながるはずである。企業は、デイケア施設や育児・高齢者介護のための休暇の拡充、より短い労働時間、そしてより大きな昇進機会といった、労働環境の改善を図ることで、より多くの女性を採用できるようになる。

差別とはすなわち、企業が人材の宝庫を十分に活用できていないことであり、性差別是正が進めば、生産性は間違いなく向上するだろう。

一橋大学経済研究所の深尾京司教授は、日本は識字能力、計算能力、問題解決力において豊かな国々の中でトップクラスなのにもかかわらず、職場での女性のスキル活用が際立って低いことを指摘している。慶應義塾大学商学部の山本勲教授は、日本では女性正規労働者の比率が高い上場企業の方が、収益性が高いという研究を発表している。

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