働き方改革は案外バカにできない成果を生む 少なくとも男女平等にようやく向かう

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

このシステムが強制力を欠いていると指摘し、笑いものにするのは簡単なことだ。しかし、少なくともこのシステムは職場レベルでの慣行に影響を与えることを目指した大規模な努力の好例ではある。そして、この努力は結局のところ、最終的な目的である。

同一労働同一賃金について、官僚たちは改革法が通過する前に詳細なガイドラインを公表するという異例の取り組みをした。省庁は不履行に対して処罰を課すことはできないが、しかし行政指導を行うことはできる。また、紛争の際に裁判官がこのガイドラインを参照する可能性があるために、企業にはガイドラインに従うインセンティブが生まれる。

改革努力は歓迎すべき変化だ

控えめではあるものの、いくつかの改善を示す実際の兆候がある。女性の労働力参加は2012年の63.4%から2016年には68.2%に上昇している。女性役員比率は、低水準だった2012年から2016年にかけて着実に上昇している。厚生労働省によれば、係長の比率は14.4%から18.6%に、課長の比率は7.9%から10.3%に、部長の比率は4.9%から6.6%にそれぞれ伸びている。

働き方改革に対する評価は、「コップ半分の水理論」といったところだろう。過去30年間の職場における男女平等への遅々たる歩みと、過去20年間の雇用者優先の改革を考えれば、私は現在の改革努力を、そのペースと方向性の両面において歓迎すべき変化だと見なしている。

現行法案の限界に不満を持つ人々は、政府がこれらの条項を施行し、産業界がそれに従って確実に慣行を変えるための努力を自らすべきだ。そして、改革の次の段階となるさらに高い目標を立てるべきである。

スティーブン・ヴォーゲル カリフォルニア大学バークレー校教授

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

Steven K. Vogel

ボストン出身。プリンストン大学在学中インターンシップで当時の国務大臣、伊藤宗一郎氏の秘書を経験。大学卒業後、ジャパン・タイムズに勤務。その後、カリフォルニア大学バークレー校で修士、博士号を取得。カリフォルニア大学アーバイン校、ハーバード大学などで教えた後、現在は、カリフォルニア大学バークレー校政治学部教授。先進国、主に日本の政治経済が専門。著書に『Japan Remodeled : How Government and Industry Are Reforming Japanese Capitalism』など。

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
政治・経済の人気記事