中古車買って旅するほうが鉄道より安かった ロンドンへの往復、実際に買って試してみた

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英公共放送のBBCや高級紙ガーディアンを含む大手メディアは、クルマでブリストルまで行ったトムさんについて「鉄道より中古車購入が安かった」とセンセーショナルに報じた。なぜなら、英国の鉄道運賃は欧州でも高い部類に入り、たとえば郊外からロンドン中心部に毎日電車で通っている人は、高価な定期代に頭を悩ませている。ちなみに、英国の会社では通常、交通費の補助は出ないことになっている。

しかし、英国の鉄道には、日帰り割引とか閑散時間帯オファーなど各種のお得なプランがある。「クルマを買ってまで列車を避けたトムさん」に対する市民たちの反応は概ね鈍く、「前売りの安い切符を買えばいいのに」「クルマを買うのに、保険に入ったり、車検を通したりするのに時間かかったはず」と比較的淡々としたものだった。

トムさんは筆者に対し、今回の活動についてこんな説明をしてくれた。

「BBCをはじめ、テレビや新聞各社が私の活動に興味を持ってくれたことはとてもすばらしい。メディア各社が取り上げてくれるのは、鉄道料金をもっと下げるべきというテーマが国民的に関心を呼ぶトピックであることを証明している。人々はみな、利上げやクレジットカードの返済、インフレの加速に脅かされている。だからこそ鉄道料金の引き下げを鉄道各社に強く望みたい」。

高い列車を避け、外国経由のLCCで帰省した学生も

2016年には、「列車のチケットが高いから」と大学がある街から実家に帰るのに、LCC(格安航空)を使ってドイツ経由で帰った学生の話題が話題になったことがある。イングランド中部のシェフィールドからロンドン北郊外にあたるエセックス州へ帰省しようとした大学生ジョーダン・コックス君が、「列車が片道47ポンドもするなら、ベルリン経由のLCCで帰ったほうが安い」と判断し、それを実行したというものだ。コックス君の旅のコストは8ポンド安かっただけでなく、ベルリン観光も楽しめたとご満悦だったそうだ。

過去には、国内列車より外国経由LCCのほうが移動費が安いと主張した学生も(ロンドン・スタンステッド空港で筆者撮影)

日本で例えれば、東京から九州に行くのに、韓国経由のLCCで飛ぶといった感じだろうか。たしかにLCCは極端に安い特売を行うこともあるので、「新幹線の代わりに、安かったからソウルで乗り継いでやって来た」といった人が出現するかもしれない。ただ、あまり周りには共感が得られないかもしれないが。

あの手この手で、少しでも出費を抑えて列車に乗りたい人が多いことから、英国には合法的手段で安く鉄道を利用するためのさまざまな指南サイトが存在する。筆者がユニークだと感じたのは、「鉄道切符はどこかで区切ったほうが安い」と主張するTrainSplitというサイトだ。このサイトでは、A地点からB地点に行くのにあえて直通の切符を買わないで、途中の区間で区切ることによってより格安の割引切符が探せる可能性がある、と訴えている。

英国の人々の「交通費節約のための妙案探し」は涙ぐましい、とまで言えるほどエスカレートしている。ただ、鉄道各社もその動きに乗じて、いろいろなプロモーションや割引切符を積極的に売り出す傾向にある。こういった動きは利用者にとっては良いことといえるだろう。

さかい もとみ 在英ジャーナリスト

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Motomi Sakai

旅行会社勤務ののち、15年間にわたる香港在住中にライター兼編集者に転向。2008年から経済・企業情報の配信サービスを行うNNAロンドンを拠点に勤務。2014年秋にフリージャーナリストに。旅に欠かせない公共交通に関するテーマや、訪日外国人観光に関するトピックに注目する一方、英国で開催された五輪やラグビーW杯での経験を生かし、日本に向けた提言等を発信している。著書に『中国人観光客 おもてなしの鉄則』(アスク出版)など。問い合わせ先は、jiujing@nifty.com

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