中古車買って旅するほうが鉄道より安かった ロンドンへの往復、実際に買って試してみた

拡大
縮小

しかも、手に入れた中古車をすぐに売却できれば、税金などは還付される見込みだという。

トムさんのロンドン―ブリストル間の旅のコスト
*距離:約175km
・スクラップ寸前の中古車……80ポンド
・自動車税……81.38ポンド
・自動車保険1日分……20.43ポンド
・ガソリン代……25ポンド
※総額206.81ポンド(クルマの方が11.29ポンド安い)

鉄道会社は「ナンセンス」と反論

トムさんの「クルマまで買って、ロンドンからブリストルまで行った」との発言に対し、同線の運行事業者であるグレートウェスタンレールウェイ(GWR)はすぐさま反応した。

トムさんが購入したスクラップ寸前の1997年製ホンダシビック。これで鉄道より安く中古車での旅が楽しめたという(Photo by Tom Church/本人提供)

英公共放送BBCはトムさんの活動についてGWRに取材したところ、同社の広報担当者は「チャーチ氏が高い運賃で旅行するのが嫌なら、格安に買える閑散時間帯の列車なら80ポンド弱で乗れるので、出発を数時間遅らせれば良かったこと」と反論し、「そもそもクルマだと所要時間が3時間半かかるが、列車なら1時間45分ほどで行ける。さらに余った時間でのんびりすることもできる」とトムさんの主張を真っ向から否定した。

トムさんは「列車の運賃はこれほどまでに高い」と市民に知らせるための活動を行ったつもりだったが、逆に鉄道オペレーターに対し「いやいや、うちのほうが便利で安い」と絶好のPRの機会を与える格好になってしまった。GWRによる反論文の最後は「うちのプロモーション切符なら8ポンド(1280円)でブリストルまで行けることもある。これぞバーゲンプライスだ」と結ばれている。

愉快なのは、鉄道会社の広報担当がこのような「明らかに意図的なネタ作り」を行うお騒がせサイトにもしっかりと、かつ真摯に対応することだろう。しかも丁寧に反論しながら、自分たちの利と説明するという手法は「英国的なユーモア」に満ちているのではないか。

実際に多くの鉄道運行事業者は驚異的とも言える格安切符を売り出すことがある。確かにGWRはこの冬、ロンドン―ブリストル間を片道最低8ポンドで提供したほか、筆者の体験でも片道わずか0.50ポンド(80円)で約110kmあるロンドンからサウサンプトンまで旅したことがある。

次ページ大手メディアも高らかに報じたが…
関連記事
トピックボードAD
鉄道最前線の人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT