トヨタ「クラウン」15代続く国内専用車の本質

使い勝手や耐久性、ローカルな価値がある

またアメリカ車に習いつつも自社開発のオートマチック変速機をいちはやく採用し始めたのも、運転のしやすさにこだわったからだ。ほかにも逸話は数々あるだろう。そのなかでも比較的新しい例でいえば、1997年にプリウスで世界初の量産ハイブリッド車を市販していながら、クラウンにハイブリッド車が加わるのは2001年の11代目でマイルドハイブリッドが試験的に実用化されたあと、本格的な採用は13代目の2008年まで待つことになった。プリウス誕生から11年後のことである。

この間、なぜ早くハイブリッド車を揃えないのか尋ねると、「ゴルフバッグを4個積めるトランク容量を確保できないから」との答えであった。歴代クラウンを購入し続ける顧客の使い勝手を悪化させないことが優先されたのだ。

革新的な挑戦も歴史の中に見ることができる

一方、革新的な挑戦もクラウンの歴史の中に見ることができる。2代目では、直列6気筒エンジンを搭載したスポーツ志向のクラウンS(1965年)や、V型8気筒エンジンを搭載したクラウン・エイト(1964年)など、高級車としてより上級志向に答えるエンジンの搭載を行っている。

デザインの面では、フロントグリルより上へヘッドライトがはみ出したような3代目の独特な顔つきに驚かされた記憶がある。評判は芳しくなく、後期型で一般的な顔つきとなったが、そういう挑戦的なデザインを時として採用した。ほかには、2ドアハードトップを車種に加えてもいる。次の4代目で紡錘形(スピンドルシェイプ)と呼ばれる丸みを持ったフロントデザインを採り入れ、グリルと一体のカラーバンパーを採用した姿は、見た目に新鮮だった。

車体色では、現行14代目でのピンクのクラウンに度肝を抜かれたものだ。

トヨタの最上級車種として王道を突き進むだけでなく、ときに芳しくない評判になったとしても試行錯誤を繰り返してきたクラウンである。そうした挑戦的な精神が開発に織り込まれることで、高級車といえども老け込まない新鮮さをつねに湛えてきたといえるのではないか。

ところで、クラウン所有者の年齢層が世代を重ねるごとに高くなっている。トヨタ広報部によれば、クラウンロイヤルは約60%が法人ユーザーだが、残りの男性個人ユーザーのうち80%以上が60歳代だ。クラウンを志向する年齢層が上がっていくままでは、クラウン愛好家が先細りしてしまう。そこでトヨタが講じた策は、スポーティな車種を加えることで、より若い世代にもクラウンを選ぶ魅力を伝えることだった。

8代目の途中で、アスリートが追加された。その手ごたえを見極めつつ、11代目で従来型のロイヤルと、若々しさを強めたアスリートという2系統のクラウンを発売することになった。結果、現在ではロイヤルとアスリート比率が3:7となり、法人約30%に対しアスリートの個人ユーザーは約70%で、そのうち男性ユーザーの40%以上が60歳代であるものの、約30%が50歳代、15%が40歳代というように、ロイヤルに比べ明らかに客層が若くなっている。

さらに12代目では「ゼロクラウン」と銘打ち、クラウンの価値を原点から見直すことを世に宣言した。デザインも、国内最上級車である重厚さは残しつつ、躍動感を目に訴えかけるフロントフェンダーの膨らみを強めたスタイルを採り入れ、それは次の13代目でより明確に表現された。

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