東海道新幹線の技術を生む「秘密基地」に潜入

リニア開業後走る「未来の新幹線」も開発中?

低騒音風洞。置かれてあるのは車両上部のモックアップ。空気抵抗や騒音の研究を行う(撮影:尾形文繁)

時速350kmという高い風速を出す「低騒音風洞」という設備もある。この風洞内に先頭車両のモックアップやパンタグラフなどを配置して、空力騒音や空気抵抗の研究を行う。このほかにも列車走行によって土木構造物に生じる疲労の影響を試験する「多軸式列車荷重模擬載荷試験装置」、架線の振動耐久性を検証する「架線振動試験装置」などの大型試験設備がある。

多軸式列車荷重模擬載荷試験装置では、列車の走行が橋梁などの構造物に与える影響を試験し、インフラの設計に役立てる(記者撮影)。

一般的には研究所の研究員というと、ひたすら研究開発に没頭しているというイメージがあるが、小牧研究施設のスタッフは「鉄道の現場と小牧を頻繁に行き来している」(大竹敏夫・技術開発部長)。日常的に現場と研究施設を行き来するだけではなく、現場と研究施設間の人事異動も多い。これが全体の技術開発力の底上げにつながっているという。

2027年にリニア中央新幹線が東京―名古屋間で営業運転を開始すれば、東海道新幹線の役割は大きく変わる。速達性はリニアが担うため、東海道新幹線は快適性により比重が置かれるようになるだろう。現在の小牧で行われている技術開発はそのときを見据えているのかもしれない。

都内にも大きな研究施設が

2002年に開設し、21世紀の東海道新幹線の発展を支えたのが小牧研究施設であるが、1964年にデビューした0系以来、長年にわたって新幹線、さらにリニアモーターカーや在来線など、鉄道に関する技術開発をトータルに行ってきたのが鉄道総合技術研究所(鉄道総研)である。

鉄道総研の車両試験装置(撮影:尾形文繁)

小牧研究施設が丘陵地帯にある「秘密の研究所」だとすれば、鉄道総研はJR国立駅から徒歩5分程度の場所にあり、秘密でも何でもない。東京都国分寺市光町という鉄道総研の住所が新幹線「ひかり」号に由来していることからわかるとおり、鉄道総研は地元の誇りでもある。

実験設備は国立以外にも各地に点在している。滋賀県米原市の風洞技術センターは、時速400kmの風速性能を持つ大型低騒音風洞設備を備える。

0系は登場以来20年近くにわたって東海道新幹線の主力車両として活躍した。しかし、その後国鉄末期の1982年に200系、1985年に100系が登場したとはいえ、1987年に国鉄が分割民営化されるまでの23年間は「変化の少ない期間だった」と、JR東海の金子慎社長は話す。国鉄の経営が厳しく、新型車両の開発に踏み出せなかったという事情もあるかもしれない。

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