東海道新幹線の技術を生む「秘密基地」に潜入 リニア開業後走る「未来の新幹線」も開発中?

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3月10日、報道公開されたJR東海の新型新幹線車両「N700S」(撮影:尾形文繁)

N700系の先頭形状、「N700A」の台車振動検知ブレーキなど、新幹線を支える最新技術はここから生まれた。また、東海道新幹線では現在、新型車両「N700S」 が2020年度の営業運転開始に向け試験走行を重ねているが、その軽量台車、新型パンタグラフなども研究成果の賜物だ。

地震対策として現在設置を急ぐ脱線防止ガード、橋脚などの土木構造物の長寿命化を目指す大規模改修工法の開発、昨年12月に起きた台車亀裂のようなトラブルを事前に察知する台車温度検査装置といったインフラ開発にも貢献している。

「この研究施設での成果は、N700Sのブラッシュアップに使えるものもあれば、さらにその先を見越しているものもある」と、小牧研究施設のスタッフは話す。つまり、N700Sが量産化される際に搭載される技術があるかもしれないし、N700Sの次に出てくるような未来の車両の開発に必要な研究も行っているというわけだ。なお、新幹線の進化というとつい速度向上を連想しがちだが、「単なるスピードアップよりも、むしろスピードは同じままでいかに安定性を高めるととともに低コスト化を実現するかを重視している」(同スタッフ)という。

車両の走行状態を再現する

小牧研究施設内にある大型試験装置の代表的なものの1つが、「車両走行試験装置」だ。試験装置の上に実際の車両を置き、レールに相当する軌条輪を回転させると、最大で時速350km程度相当の車輪の回転が得られる。

JR東海・小牧研究施設の車両走行試験装置。実際の車両の振動を再現することができる(写真:JR東海)

さらにX0編成が得たデータを元に線路の上下、左右、レールの凸凹やトンネル内の空気力の変化を加振装置で模擬することで、実際の車両の走行状態を再現し、車両のさまざまな部品の耐久性の研究を行うことができるのだ。逆に言うと、車両の不具合に至る前兆もこの設備を通じてとらえることができるというわけだ。

車両運動総合シミュレータは、車体のあらゆる振動を忠実に再現することができ、乗り心地改善に役立てられている(記者撮影)

「車両運動総合シミュレータ」は車内の快適性を研究するための実験装置だ。N700系を模した客室を支える6本の油圧アクチュエータが、前後、左右、上下など車体のあらゆる振動を忠実に再現する。客室内には車窓を流れる風景がCGで再現され、実際の車両から録った走行音も再生される。

本物そっくりの客室内のシートに座って目をつぶり、走行音と振動を感じ取ると、本物の新幹線の車内にいるような錯覚に陥る。新型N700Sではグリーン車に「フルアクティブ制振制御装置」を搭載し、トンネル区間での揺れ半減など乗り心地を改善しているが、その開発にも一役買っているのだろう。

もちろん、この装置は本物そっくりという感動を味わってもらうためのものではない。シミュレータの乗り心地はすべて数値化されている。したがって、同じ条件で何度も試験したり、ある条件だけを悪くした場合の乗り心地を調べたりすることもできる。従来の試験は実際の列車に乗った研究員の実感頼みだったが、現在ではデータを用いて客観的に行われている。

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