ハワイの空に巨大旅客機、ANAに勝算はあるか スカイマーク争奪戦の産物がリゾート仕様に

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ANAにとって前例のない巨大機材の膨大な座席を埋めることはできるのか。同社が強調するのが、マイレージプログラム会員による特典航空券利用だ。ホノルル線の2017年度平均搭乗率は92.8%に上るなど、毎便ほぼ満席の状態が続いている。日頃出張でANAのマイルを貯めている客が休暇で航空券に替えようとしても、特典航空券の枠が少なかった。今回A380で座席が大幅に増えたことによって利用を促せるともくろむ。

ANAはホノルルから離島への富裕層向けの移動手段として、「ホンダジェット」を活用する(撮影:大澤誠)

また、ファーストクラスの利用客を想定した、富裕層向け事業も強化する。今夏に双日と合弁で設立するビジネスジェットのチャーター手配事業会社では、2019年度からホノルルでチャーター便を用意し、オアフ島以外の離島への乗り継ぎ(アイランドホッピング)サービスを提供する。運航機材は、ホンダが開発した7人乗り(パイロット含む)の小型機「ホンダジェット」となる予定だ。

ハワイ路線はライバルがひしめき合う

とはいえ、ハワイ路線の競争は激しさを増すばかり。今年3月からコードシェア(共同運航)提携を始めた日本航空(JAL)とハワイアン航空は、両社合わせた路線シェア(2018年3月時点の週間提供座席数)で52%と他を圧倒している。

JAL、ハワイアンともに成田や羽田だけでなく、関西、中部、福岡、新千歳といった首都圏以外からの便も多い。ハワイアンは2016年末、JALも昨年9月にハワイ島・コナへの路線も就航し、ハワイ側の目的地も広げている。今後はコードシェアだけでなく、ダイヤ調整など路線の一体運営が可能な共同事業(JV=ジョイントベンチャー)の開始も予定している。長年の牙城であるハワイを守るべく、JALも攻めを続ける。

関西国際空港からは昨年、マレーシアのエアアジアXとシンガポールのスクートという2つのLCC(格安航空会社)が相次いでホノルル線に参入。フルサービス航空会社が独自のサービスを提供してきた市場に価格競争を仕掛け、航空各社に強烈な印象を植え付けた。

ANAがA380をホノルル線に導入すれば、需給のバランスは当然大きく崩れる。しかも特典航空券による無償の旅客が増える。わずか3機のためにA380の操縦免許を有するパイロットを採用し、整備も海外での外注を予定する。安定した路線の収益を出すにはハードルが高い。

夢あふれるハワイへの空の旅。ANAにとっても夢のある路線にすることができるか。

中川 雅博 東洋経済 記者

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なかがわ まさひろ / Masahiro Nakagawa

神奈川県生まれ。東京外国語大学外国語学部英語専攻卒。在学中にアメリカ・カリフォルニア大学サンディエゴ校に留学。2012年、東洋経済新報社入社。担当領域はIT・ネット、広告、スタートアップ。グーグルやアマゾン、マイクロソフトなど海外企業も取材。これまでの担当業界は航空、自動車、ロボット、工作機械など。長めの休暇が取れるたびに、友人が住む海外の国を旅するのが趣味。宇多田ヒカルの音楽をこよなく愛する。

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