ファミマが「150円のパンツ」を発売したワケ GWはいつもとは違う「イレギュラーな期間」

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また、GWはコンビニが得意とする緊急目的購買が年末年始やお盆休みとともに最も高まるシーズンともなる。歯ブラシやシャンプー・化粧品などのトラベルセット、日焼け止め・携帯電話充電器などの旅行関連商品の販売指数が4月の通常週の約1.6倍になる。

緊急用途となるため、メーカー希望小売価格、いわゆる定価販売でも、ドラックストアなどの安売り業態に行く手間をかけずにコンビニで買うという購買パターンとなるのだ。

そんな中、ファミリーマートが他業態に顧客が流れることもない価格で勝負できる商品『ワンデーパンツ税込150円 (M-L、L-LLの2種)』を、5月1日(水)に発売した。

ファミリーマートの衣料品は、40%強が18時〜24時の夕夜間で購買されており、これは「お泊り緊急需要」であると推察される。そのため、買いやすい価格の使い切りパンツを発売することにより、お泊り緊急需要を他業態も含めて全てを取り込んでしまおうという戦略をとってきたわけだ。

この『ワンデーパンツ』、特殊伸縮性素材「マイクロフィンドライ」を使用した紙から生まれた新しい不織布でできている。コットンのような肌触りと伸縮率260%と伸びてフィットし、乾きやすさと湿気の通りやすさ等にも優れた特徴を併せ持つ素材の商品で使い捨てとは思えない品質の商品となっている。

今後、日用品でも「独自商品」が不可欠になる

コンビニの日用品では、緊急目的購買など定価販売をベースに売上げ・利益を確保する展開がされてきたが、ドラックストアや100円ショップなどが『近くて便利』の商圏にも進出してきていることを考えると、今後は他業態にはないコンビニ独自商品で勝負することが不可欠。そのためには、多くの店舗網を前提とした商品開発をする戦略に徐々に舵を切ってくることが必要になるのかもしれない。

コンビニの店舗網があれば、商品開発における一番の課題である商品ロット数をクリアできる。ロット数は商品開発における価格決定に大きな影響を与え、ロット数が多ければ多いほど、利益の取り方にもよるが、低価格が実現する。

今後は、こうした他の業態には真似しづらいコンビニならではの強みを生かした商品開発に期待がかかっている。

GWのコンビニは、各店舗の年末までの販売戦略が明確になる。行楽先でいつもは行かないチェーンのコンビニに触れてみたり、休みが明ける前に近所のマイコンビニをのぞいてみたりしてはいかがでしょうか?

いつもと違ったコンビニが垣間見られるかもしれません。

渡辺 広明 マーケティングアナリスト
わたなべ ひろあき / Hiroaki Watanabe

浜松市出身。2児の父。マーケティングアナリスト、コンビニ評論家、流通ジャーナリスト、約700品の商品開発に携わるマーケター、パラレルワーカー、元コンビニバイヤー、元コンビニ店長、「浜松市やらまいか大使」など、さまざまな顔を持つ。NHKラジオ「すっぴん!」流行アナライズレギュラー、フジテレビ「ホンマでっか⁉︎TV」レギュラー評論家として活躍する他、スポーツ紙「東京スポーツ」に連載を持ち、ワイドショー・新聞・週刊誌などのコメント・講演会・アドバイザリー・顧問などでも幅広く活動中。趣味は「ドラゴンズ熱烈応援」「時折フルマラソン」「発展途上国の教育支援(ガーナ・ラオス)」。

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