「空気みたいに楽な存在でした。末っ子気質な私は年上の男性が基本的に好きなんです。でも、年末年始は彼も自分の家庭に帰ってしまいます。それがものすごく寂しくて、だけど子どもから父親を奪うなんてことはしたくなくて、気持ちがすり減ってしまいました」
このような過去が影響しているのか、濃厚な「女っぽさ」を漂わせる由紀さん。職業はホステスではない。システムエンジニアだ。超大手メーカーの子会社である職場は男性が9割。職場恋愛は期待しなくても、「技術力がある人と仲良くなる」ことは重要だと由紀さんは説く。
「私は事務職やパソコン教室のインストラクターなどを転々としてから、10年ほど前に今の会社に入りました。ほかの人よりはコミュニケーション能力がありますが、技術力が高いとは言えません。仕事で困ったときに助けてくれる人は必要です」
由紀さんにとって「助けてくれる人」の1人が、1歳年下の同僚である裕也さん(仮名)だった。
「仕事はできるけれど、プライベートのコミュニケーションはほとんどできない人です。すごく奥手で、私のほかには付き合った女性はいないと思います」
「どれぐらい年収があれば結婚を考えられる?」
裕也さんからすれば、明るくて美人で自分に頼ってくれる由紀さんをまぶしく感じたに違いない。「どれぐらい年収がある男だったら結婚を考えられる?」と不器用な質問をし、「450万円は欲しい」と由紀さんが答えると、転職を考えていることを明かしたうえで、「正社員になったら年収500万円はもらえる」とアピールした。ロマンチックなプロポーズではないが、実家が商売に失敗しておカネに苦労した経験がある由紀さんの心には響いた。
由紀さんは7年間も付き合ってきた既婚男性との別れを決意。30代半ばを過ぎて「一人きりで老後を迎えたくない」という焦りが高まり、裕也さんとの結婚に気持ちが傾いた。
ただし、裕也さんには最後まで恋愛感情は持てなかったと由紀さんは振り返る。具体的には「キスをすることが想像できなかった」のだ。由紀さんによれば、「キスができる」と感じた相手は、性格や職業にかかわらず、少なくとも恋愛感情は持てる。しかし、裕也さんは交際した後も何もしてこなかった。
「半年後にようやく手を握ってきただけです。私から求める気はありませんでしたが、彼から求められたら応じようとは思っていました。そうしたら新しい感情が持てたかもしれなかったのですが……」
無料会員登録はこちら
ログインはこちら